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新たな創薬標的を同定するためのネットワークに基づくツール

Network-Based Tools for the Identification of Novel Drug Targets

Presentations

Sci. Signal., 17 May 2011
Vol. 4, Issue 173, p. pt3
[DOI: 10.1126/scisignal.2001950]

Illés J. Farkas1, Tamás Korcsmáros2,3, István A. Kovács3,4, Agoston Mihalik3, Robin Palotai3, Gábor I. Simkó3,5, Kristóf Z. Szalay3, Máté Szalay-Bekö3, Tibor Vellai2, Shijun Wang6, and Peter Csermely3*

1 Statistical and Biological Physics Group of the Hungarian Academy of Sciences, Pázmány P. s. 1A, H-1117 Budapest, Hungary.
2 Department of Genetics, Eötvös University, Pázmány P. s. 1C, H-1117 Budapest, Hungary.
3 Department of Medical Chemistry, Semmelweis University, 37-47 Tüzoltó Street, H-1094 Budapest, Hungary.
4 Department of Physics, Loránd Eötvös University, Pázmány P. s. 1/A, H-1117 Budapest, Hungary, and Research Institute for Solid State Physics and Optics, H-1525 Budapest, Post Office Box 49, Hungary.
5 Vanderbilt University, Nashville, TN 37240, USA.
6 Clinical Center, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.

Adapted from the opening presentation at the International Conference on Systems Biology of Human Disease (SBHD) in Boston, Massachusetts, 16 to 18 June 2010.

* Presenter and corresponding author. E-mail, csermely@eok.sote.hu

要約:ここ数年、創薬のための新たな分子標的の同定において、ネットワークに基づくツールが ますます重要になってきている。シグナル伝達に関連する薬物標的を予測するためのシステムに基づく手法は、とくに有望な分野となってきた。本稿では、タン パク質間相互作用とシグナル伝達ネットワークのモジュール間の架橋部分と重複部分が、将来のドラッグデザインの重要な鍵になりうることを示す、われわれの 研究についてまとめる。モジュール間の結節点(ノード)は、シグナル伝達モジュール間の摂動の伝達を媒介するうえで極めて有効であり、ネットワークの協同 においても重要である。ModuLandモジュール化アルゴリズムを用いて行われた酵母インタラクトームのストレス誘導性の再構成の解析からは、モジュー ル重複部分の構成要素がストレスに対する細胞の順応において重要な役割を担うことが示された。8つの主要なシグナル伝達経路について統一規格で整理・選別 されたSignaLink(http://www.SignaLink.org)データベースにおいて、シグナル伝達のクロストークは、Caenorhabditis elegans(線虫)やDrosophila melanogaster(キ イロショウジョウバエ)よりもヒトでずっと顕著にみられた。また、われわれは、複数の経路に関与するシグナル伝達タンパク質のなかに、確立された薬物標的 と薬物標的の候補が複数含まれることを示した。最後に、われわれは、細胞ネットワークモジュールの重複部分が至る所に広がっているということは、特定の細 胞機能を改変するためには、複数のタンパク質のひとつひとつを部分的に阻害するマルチターゲット薬をより広く利用する必要があるということだと警告する。 なせならば、完全な機能停止を目的として個々のタンパク質を標的にしても、通常は特定の過程に対する特異性をほとんど示さない複数の細胞機能に影響を及ぼ すからである。ネットワークの接続形態、なかでもネットワーク動態を解析するためのツールは、マルチターゲット薬を開発するためにこれまでとは別のター ゲットセットを同定するうえで、大きな可能性を秘めている。

I. J. Farkas, T. Korcsmáros, I. A. Kovács, A. Mihalik, R. Palotai, G. I. Simkó, K. Z. Szalay, M. Szalay-Beko, T. Vellai, S. Wang, P. Csermely, Network-Based Tools for the Identification of Novel Drug Targets. Sci. Signal. 4, pt3 (2011).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

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