SUMO-Tagとは?
• 概要
SUMOタグ(SUMO-Tag)は、酵母からヒトに至るまでの真核生物に広く保存されたユビキチン様タンパク質(UBL:ubiquitin-like protein)の一種「SUMO(Small Ubiquitin-like Modifier)」タンパク質を基に設計された、約11 kDa(約100アミノ酸残基)の小型かつ高機能な融合用タンパク質タグです[PMID:15263846
、19107426
]。SUMOタンパク質は本来、翻訳後修飾「SUMO化(SUMOylation)」として細胞内タンパク質に可逆的に共有結合され、局在・安定性・相互作用等の多くの細胞機能を制御します[PMID:15189146
]。
• 効果と利点
SUMOタンパク質を遺伝子組換えで目的タンパク質(POI)のN末端に融合させることで、タンパク質発現量の改善、可溶性の向上、プロテアーゼ分解の抑制、フォールディングの促進といった効果が得られることが多くの研究で報告されています[PMID:16084395
]。SUMOタグの大きな利点は、タンパク質発現量や可溶性の向上に加えて、高精度なタグ除去に有効な点です。SUMO特異的なプロテアーゼ(酵母由来Ulp1、ヒト由来SenP2等)は、SUMOタグのC末端にあるGly-Glyモチーフとその立体構造全体を認識して切断するため、目的タンパク質のN末端には一切の余分なアミノ酸を残さず、完全なネイティブ配列で回収することができます[PMID:15263846
、27771300
]。この点は、短い線状配列を認識し、切断後に余分なアミノ酸残基を残す他のプロテアーゼ(TEV、thrombin等)と異なる特長を示します[PMID:27771300
]。
• SUMOタグのバリアント
現在市販されているSUMOタグにはその由来や使用環境に応じていくつかのバリアントがあります[他社製品ページ:LifeSensors, Inc.社
、PMID:19107426
、22442034
、27771300
]。
- SUMOpro Tag(酵母Smt3由来タグ):大腸菌等の原核細胞発現系での使用に適しています。
- SUMOpro3 Tag(ヒトSUMO3由来タグ):ヒト由来タンパク質等の哺乳類タンパク質の発現に適しており、大腸菌等の原核細胞に加えて、酵母等の真核発現系でも使用されます。
- SUMOstar™ Tag(改変型Smt3タグ):内在性のSUMOプロテアーゼに切断されないよう設計された耐性タグであり、酵母、昆虫、哺乳類細胞を含む様々な真核発現系での使用に適しています。専用のSUMOstar™ プロテアーゼと組み合わせて使用できます。
• 精製方法と最新のアプローチ
従来、SUMOタグはそのままではNi2+-NTA樹脂やグルタチオン樹脂のような精製用樹脂と特異的に結合する性質を持たないため、一般的にはHisタグ等と組み合わせたタンデムタグ戦略での精製が行われてきました[PMID:26297996
]。この課題を解決するため、現在ではSUMOタグそのものを認識するVHH抗体(Nanobody®)を利用したビーズを用いる「SUMO-Tag-Trap」製品が開発され、SUMOタグ単独での免疫沈降(IP)やアフィニティ精製が可能となっています。SUMO-Tag-Trapは、酵母Smt3、ヒトSUMO3、SUMOstar™を含む複数のSUMOホモログに対する交差反応性を実験的に確認したVHH抗体によって構成されており、研究の幅をさらに広げる製品として開発されました。
■ VHH抗体とは?
VHH抗体は、Nanobody® としても知られるラクダ科動物の「重鎖抗体(Heavy chain-only antibody)」由来の抗原結合ドメインです。一般的な抗体と比べて、10分の1程度とサイズが小さく、高い特異性と親和性を示すことで知られます。

図. ラクダ科動物のユニークな重鎖抗体・VHH

図. 従来の1/10ほどの分子量
■ Nano-Trapとは?
Nano-Trap(ナノトラップ)は、迅速かつ効率的な免疫沈降(IP)に最適です。各種担体(アガロースビーズ、磁性アガロースビーズ、磁気ビーズ)に結合したVHH抗体で構成されます。
各種ビーズ上に結合したVHH抗体は、ビーズ上に残存し、SDSサンプルバッファー中で溶出されません。したがって、従来のIP解析でしばしば問題となるIP抗体由来の軽鎖または重鎖バンドの干渉が無く、シングルバンドの精製を可能とします。さらに、ウェスタンブロットに使用する一次抗体/二次抗体を自由に選択できます。
■ Nano-Trapのアプリケーション
- IP(免疫沈降)/ CoIP(共免疫沈降)
- ChIP(クロマチン免疫沈降)/ RIP(RNA免疫沈降)
- 質量分析(Mass spectrometry)
- On-bead enzyme assay

図. Nano-Trap(左)と従来型であるProtein A/G結合IgG抗体(右)を用いた免疫沈降の概要。Nano-Trapでは、単一のバンドを得られ、従来型とは異なり軽鎖/重鎖由来のバンドは観察されません。
■ Proteintech Group(プロテインテック)とは?
Proteintech Group, Inc.(プロテインテック)社は、2001年に設立された抗体製造メーカーです。現在までに、米国本社の他、英国、中国、ドイツ、フランス、シンガポール等で支社を展開し、各国で様々なマーカー抗体、タンパク質研究用試薬を供給しています。国内におけるテクニカルサポート等は、2016年より株式会社プロテインテック・ジャパン(www.ptglab.co.jp
)が担当しています。
- 全てオリジナル商品:自社ラボで製造、検証済み(購入後1年間の交換保証付き)
- 数多くの評判:国内・海外における累計130,300報以上の論文使用実績(2025年4月現在)
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