Nano-CaptureLigands™(ナノキャプチャーリガンド)は、ビオチン標識済みのアルパカ由来抗Ig(イムノグロブリン)抗体です。バイオセンサーやELISAアッセイにおいて、抗アナライト抗体(=リガンド)の部位特異的キャプチャー・固定化に使用できます。
背景
■ ラベルフリーのバイオセンサーについて
ラベルフリー(Label-free)のバイオセンサーは、生体分子相互作用の測定および特性評価のために広く普及しており、結合アッセイやスクリーニングに利用されます。バイオセンサー表面には主に抗体(=リガンド)がプローブされており、抗原(=アナライト/分析物)との相互作用によってシグナルを検知します。その解析では、親和性(affinity)やオンレート/オフレート(On-rate/Off-rate)を決定することが可能です。代表的なバイオセンサー装置としては、表面プラズモン共鳴(SPR)を測定原理とするCytiva社(旧GE Healthcare Life Sciences社)のBiacore™、バイオレイヤー干渉法(BLI)を測定原理とするSartorius社のFortéBio、switchSENSE法を原理とするDynamic Biosensors社のswitchSENSE®が知られています。

図1. BLIを用いた抗体(ウサギIgG)とその標的に対するカイネティクス解析。ウサギIgGキャプチャーするためにNano-CaptureLigand™ をストレプトアビジンコートのバイオセンサーチップに結合させた。
■ バイオセンサー表面へのリガンド固定化方法
センサー表面にリガンドを固定化する方法として、「直接固定化法」と「間接固定化法」が知られます。
- 直接固定化法:リガンド中のリジン残基やシステイン残基中の官能基を利用した共有結合、またはクリックケミストリーを利用してバイオセンサー上に直接固定化する方法
- 間接固定化法:最初に抗イムノグロブリンFcドメイン特異的な抗体をバイオセンサー上に結合させ、続けてリガンドをキャプチャー(捕捉)させることでバイオセンサー上に間接的に固定化する方法
間接固定化法では、抗イムノグロブリンFcドメイン特異的抗体やイムノグロブリン結合タンパク質(プロテインA、プロテインG、プロテイA/G)が使用されます。カイネティクス解析において、バイオセンサー上にリガンド(主に抗アナライト抗体)を安定かつ均一に配向することは重要であり、間接固定化法はいくつかの利点を提供します。
本稿では、アルパカ由来の抗イムノグロブリンVHH抗体『Nano-Capture Ligands™(ナノキャプチャーリガンド)』を紹介します。「間接固定化法」に利用され、部位特異的な結合によってリガンドの均一な配向を実現します。
■ VHH抗体とは?
VHH抗体は、Nanobody® としても知られるラクダ科動物の「重鎖抗体(Heavy chain-only antibody)」由来の抗原結合ドメインです。一般的な抗体と比べて、10分の1程度とサイズが小さく、高い特異性と親和性を示すことで知られます。
■ Nano-CaptureLigand™(ナノキャプチャーリガンド)とは?
Nano-CaptureLigand™(ナノキャプチャーリガンド)は、ビオチンを標識したアルパカ由来抗イムノグロブリン(Ig)抗体です。アビジンやストレプトアビジンでコーティングされたバイオセンサー上に結合させ、その上に非ビオチン化抗体(各種イムノグロブリン、抗体断片)やFcドメイン融合タンパク質等のリガンドをキャプチャーさせることで、抗原や標的分子とするアナライトとの相互作用を解析できます。
■ Nano-CaptureLigand™ の利用
Nano-CaptureLigand™ は、バイオレイヤー干渉法(BLI:Bio-Layer Interferometry)や表面プラズモン共鳴法(SPR:Surface Plasmon Resonance)を原理としたバイオセンサー上へのリガンド(抗体やFc融合タンパク質)の捕捉、およびELISAマイクロプレート上への抗体捕捉に利用できます。バイオセンサーおよびELISAマイクロプレートはストレプトアビジンまたはアビジンでコーティングされている必要があります。
- SPR(表面プラズモン共鳴法)
- BLI(バイオレイヤー干渉法)
- ELISA
Nano-Capture Ligands™ を利用した間接固定化法は、以下の利点を提供します。
- リガンドの部位特異的な固定化
- 再生可能、高い化学的安定性
(キャプチャーしたリガンド分子をサイクル毎に除去可能) - 粗サンプル中の未精製モノクローナル抗体をキャプチャー可能
- 容易に密度を調節可能
使用目的
■ アプリケーション
- 抗体のカイネティクス・親和性の解析
- ハイブリドーマ上清、血清、血漿等の粗サンプル中の抗体検出やスクリーニング
- アナライト(抗体や抗原)の検出
- エピトープビニング
(Epitope Binning:取得した各モノクローナル抗体クローン同士で同じエピトープ領域を共有しているかどうかを検討するためのアッセイ方法)
■ バイオセンサー表面への抗体固定化
Nano-CaptureLigands™(ナノキャプチャーリガンド)は、表面プラズモン共鳴法(SPR)やバイオレイヤー干渉法(BLI)で使用されるストレプトアビジンまたはアビジンコーティングバイオセンサー上で非ビオチン化抗体を固定化します。Nano-CaptureLigands™(ナノキャプチャーリガンド)は、親和性が高いため、キャプチャーされた抗体の有意な解離を伴わずに、安定したベースラインを提供します。またNano-CaptureLigands™ は、化学的安定性が高いため、複数回の再利用のために10回以上再生することができます。一方で、従来の抗体は、ナノボディよりも安定性が低く、固定化されたキャプチャー用抗体(一般的なIgG抗体)は、頻繁に再生されない可能性があります。また、リガンド(抗体)のビオチン化やNHSとの反応を介した、センサー表面への直接固定化法は、抗体のパラトープを修飾し、アナライトに対するリガンドの親和性に影響を及ぼす可能性があります。

図5. (左)Nano-CaptureLigand™ を使用した抗体の部位特異的な固定化方法。リガンドとなる抗体のビオチン化は必要ありません。キャプチャーされた抗体は均一に配向します。(右)リガンドとなる抗体を直接ビオチン化する方法は、抗体のランダムで非配向的な固定化をもたらします。また、ランダムなビオチン化によって抗体のパラトープの修飾、ターゲットへの結合を損なう配向での抗体固定化を生じる可能性があります。固定化された抗体の一部が標的に結合します。
■ ELISAプレートへの抗体固定化
Nano-CaptureLigands™ は、サンドイッチELISA用のキャプチャー抗体を部位特異的に固定化します。Nano-CaptureLigands™ は、イムノグロブリン結合タンパク質(プロテインA、G、L)のような部位特異性とビオチン-ストレプトアビジン相互作用の安定性を併せ持ちます。イムノグロブリン結合タンパク質とは異なり、サブクラス特異的であるため、キャプチャー抗体および検出抗体ペアの組み合わせを幅広く検討することができます。また、Nano-CaptureLigands™ は親和性が高く、低濃度の抗体でも効率的に強い固定化を実現します。
特長
- 非ビオチン化抗体(イムノグロブリン)の部位特異的固定化
- 目的リガンドに対する抗体をビオチン化せず、迅速にアッセイ可能
- 高い特異性による選択的固定化
- 安定したベースライン形成
- 再生・再利用可能
製品一覧
ターゲット | 標識 | 免疫動物 | 品名 | アプリケーション | 品番 |
---|---|---|---|---|---|
ウサギIgG/ヒトIgG | ビオチン(Biotin) | Alpaca | Alpaca anti-rabbit/human IgG, recombinant VHH, biotinylated [CTK0101(VHH0238)] | BLI, SPR, ELISA | shurbGB-1-10/shurbGB-1-100 |
ヒトIg Lambda, light chain | Alpaca anti-human Ig, lambda, recombinant VHH, biotinylated [CTK0110(VHH0369)] | shuLB-1-10 /shuLB-1-100 | |||
ヒトIgE | Alpaca anti-human IgE, recombinant VHH, biotinylated [CTK0111(VHH0428)] | shuEB-1-10/shuEB-1-100 | |||
マウスIgG1 | Alpaca anti-mouse IgG1, recombinant VHH, biotinylated [CTK0103 (VHH0295)] | smsG1B-1-10/smsG1B-1-100 | |||
マウスIgG2a | Alpaca anti-mouse IgG2a, recombinant VHH, biotinylated [CTK0108(VHH0249)] | smsG2aB-1-10/smsG2aB-1-100 | |||
マウスIgG2b | Alpaca anti-mouse IgG2b, recombinant VHH, biotinylated [CTK0106] | smsG2bB-1-10/smsG2bB-1-100 | |||
マウスIgE | Alpaca anti-mouse IgE, recombinant VHH, biotinylated [CTK0112 (VHH0347)] | smsEB-1-10/smsEB-1-100 |
Nano-CaptureLigand™(ナノキャプチャーリガンド)
「バイオセンサー開発に最適」なナノキャプチャー抗体です(【10UL】または【100UL】の2種類の包装サイズから選択できます)。
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
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Anti IgG Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0101![]() |
PGI | SHURBGB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgG Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0101![]() |
PGI | SHURBGB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti Ig λ-LC-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0110![]() |
PGI | SHULB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti Ig λ-LC-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0110![]() |
PGI | SHULB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti IgE, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0111![]() |
PGI | SHUEB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgE, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Human (Alpaca) Biotin, CTK0111![]() |
PGI | SHUEB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti IgG1 Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0103![]() |
PGI | SMSG1B-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgG1 Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0103![]() |
PGI | SMSG1B-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti IgG2a Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0108![]() |
PGI | SMSG2AB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgG2a Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0108![]() |
PGI | SMSG2AB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti IgG2b Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0106![]() |
PGI | SMSG2BB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgG2b Fc-specific, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0106![]() |
PGI | SMSG2BB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
Anti IgE, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0112![]() |
PGI | SMSEB-1-10 | 10 UL |
¥27,000 |
Anti IgE, Nano-CaptureLigandTM, recombinant VHH, Mouse (Alpaca) Biotin, CTK0112![]() |
PGI | SMSEB-1-100 | 100 UL |
¥99,000 |
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- マウス IgG2b 抗体標識キット
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商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
※ 表示価格について