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免疫学
NF-κBのホスファターゼ依存性阻害

Immunology
Phosphatase-Dependent Inhibition of NF-κB

Editor's Choice

Sci. Signal., 30 October 2012
Vol. 5, Issue 248, p. ec277
[DOI: 10.1126/scisignal.2003736]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

M. Brechmann, T. Mock, D. Nickles, M. Kiessling, N. Weit, R. Breuer, W. Müller, G. Wabnitz, F. Frey, J. P. Nicolay, N. Booken, Y. Samstag, C.-D. Klemke, M. Herling, M. Boutros, P. H. Krammer, R. Arnold, A PP4 holoenzyme balances physiological and oncogenic nuclear factor-kappa B signaling in T lymphocytes. Immunity 37, 697-708 (2012). [PubMed]

A. Tikhonova, I. Aifantis, The taming of the NF-κB: PP4R1 navigates while PP4c dephosphorylates. Immunity 37, 594-596 (2012). [PubMed]

免疫細胞における標準的な核因子κB(NF-κB)経路の活性化は、細胞の分化、増殖、および生存を媒介する。T細胞受容体(TCR)複合体や腫瘍壊死因子-α(TNF-α)受容体(TNFR)などの受容体を介するシグナルに応答して、T細胞では、触媒サブユニットαおよびβから成るκB阻害因子(IκB)キナーゼ複合体(IKK)が活性化され、阻害因子IκBをリン酸化する。このリン酸化によって、IκBは分解してNF-κBサブユニットから解離し、NF-κBは次に核内に移行して標的遺伝子の発現を促進できるようになる。T細胞における異常なNF-κBシグナル伝達は、さまざまな白血病とリンパ腫を引き起こす(TikhonovaとAifantisの解説記事を参照)。ホスファターゼがNF-κBシグナル伝達の調節において果たす可能性のある役割について検討するために、Brechmannらは、NF-κBレポーターを発現するJurkat T細胞株を、低分子干渉RNA(siRNA)を用いてスクリーニングした。Brechmannらは、PP2Aファミリーのセリン/トレオニンホスファターゼPP4cの調節サブユニットであるPP4R1をノックダウンすると、TCRまたはTNFR刺激に応答するNF-κBの活性が上昇することを見いだした。トランスフェクションされた細胞における実験では、PP4R1がIKKαおよびIKKβと会合し、PP4cはPP4R1が存在する場合にのみIKK複合体と会合することが示された。TCR刺激に応答するIKKαおよびIKKβの活性化ループのリン酸化は、PP4R1欠損細胞において、対照細胞と比べて亢進し、IKKリン酸化の亢進によってNF-κB活性化が亢進した。in vitroでのホスファターゼアッセイによって、PP4R1とPP4cの両方の存在下では、IKKαとIKKβが脱リン酸化されることが示された。皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)は、恒常的なNF-κB活性化が特徴である。この著者らは、CTCLに由来する細胞株においてPP4R1の量が減少していることを見いだし、これらの細胞株の1つ(内因性PP4cをもつ)においてPP4R1をレトロウイルスを用いて発現させると、細胞増殖が抑制された。これらのデータを総合すると、PP4R1はNF-κBシグナル伝達の抑制因子であり、PP4R1の欠損がT細胞リンパ腫に関連することが示唆される。

J. F. Foley, Phosphatase-Dependent Inhibition of NF-B. Sci. Signal. 5, ec277 (2012).

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2012年10月30日号

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