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IL-6が肝細胞の脱分化を誘導する
IL-6 drives hepatocyte dedifferentiation
SCIENCE SIGNALING
14 Mar 2023 Vol 16, Issue 776
DOI: 10.1126/scisignal.adh4937
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org
L. Li, L. Cui, P. Lin, Z. Liu, S. Bao, X. Ma, H. Nan, W. Zhu, J. Cen, Y. Mao, X. Ma, L. Jiang, Y. Nie, F. Ginhoux, Y. Li, H. Li, L. Hui, Kupffer-cell-derived IL-6 is repurposed for hepatocyte dedifferentiation via activating progenitor genes from injury-specific enhancers. Cell Stem Cell 30, 283-299.e9 (2023).
傷害誘導性の肝細胞のリプログラミングはクッパー細胞由来の炎症促進性サイトカインに依存する
肝臓がもつ驚くべき再生能は、肝細胞および胆管細胞の可塑性に依存している。各細胞種が肝修復にどのように寄与するかは損傷の種類に応じるが,いずれもin vivoにおいてリプログラミングを受けて両方の分化細胞種になる。Liらは、この器官の門脈周囲領域を傷害する化合物を給餌したマウスを用い、肝細胞から肝前駆細胞様細胞(LPLC)への脱分化を検討した。門脈周囲のLPLCには、リプログラミング関連および前駆細胞関連遺伝子の活性化に加え、炎症促進性サイトカインにより誘導される転写産物の活性化も認められた。門脈周囲LPLCの誘導は、肝臓の常在マクロファージであるクッパー細胞の活性化に依存していたが、浸潤マクロファージやその他の免疫細胞種の活性化には依存していなかった。傷害肝のクッパー細胞から高度に産生される分泌因子のうちインターロイキン-6(IL-6)のみが、非傷害肝で異所性に発現させたときにLPLCを誘導した。損傷またはIL-6の過剰発現によるLPLCの誘導は、IL-6受容体サブユニットであるIL-6RAおよびgp130に依存し、また、下流転写因子STAT3にも依存していた。STAT3は、LPLCのリプログラミングおよび前駆細胞関連遺伝子の調節領域と結合し、その結合は、ヒストンのアセチル化およびそれら遺伝子座における転写の亢進と関連していた。胚発生期の肝細胞においてもこれら遺伝子は高発現していたが、その発現は,LPLCにおいてSTAT3と結合したときにみられるエンハンサーの活性化とは異なるエンハンサーの活性化と関連していた。このことは、肝臓の発生においてSTAT3が不可欠ではないことと一致している。これらの知見は、組織損傷が、胎児肝細胞における遺伝子発現シグネチャーと類似する遺伝子発現シグネチャーを誘導するがそれとは異なるエンハンサーの活性化を介して、局所的にクッパー細胞を刺激してIL-6を分泌させ、ひいては肝細胞から前駆細胞様状態へのリプログラミングを誘導するというモデルを意味している。