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核内のSUMO化されたIL-33が肝細胞がん細胞の転写因子IRF1を安定化させて免疫逃避を促進する

SUMOylated IL-33 in the nucleus stabilizes the transcription factor IRF1 in hepatocellular carcinoma cells to promote immune escape

Research Article

SCIENCE SIGNALING
14 Mar 2023 Vol 16, Issue 776
DOI: 10.1126/scisignal.abq3362

Zengbin Wang1, †, Banglun Pan1, †, Jiacheng Qiu1, †, Xiaoxia Zhang1, Xiaoling Ke1, Shuling Shen1, Xiaoxuan Wu1, Yuxin Yao1, Nanhong Tang1, 2, 3, *

  1. 1 Department of Hepatobiliary Surgery and Fujian Institute of Hepatobiliary Surgery, Fujian Medical University Union Hospital, Fuzhou 350001 China.
  2. 2 Cancer Center of Fujian Medical University, Fujian Medical University Union Hospital, Fuzhou 350001, China.
  3. 3 Key Laboratory of Gastrointestinal Cancer (Fujian Medical University), Ministry of Education, Fuzhou 350122, China.

These authors contributed equally to this work.

* Corresponding author: Email: fztnh@fjmu.edu.cn

SUMOが肝がんの免疫監視のスイッチを切る

インターロイキン33(IL-33)は二重機能タンパク質である。細胞外サイトカインとしては、肝がんの増悪に関連している。一方でWangらは、IL-33が細胞内因子としては腫瘍抑制性であり、その機能が肝がん細胞では翻訳後修飾によって遮断されていることを明らかにした。肝細胞がん(HCC)患者由来の細胞株と組織では、細胞内IL-33の量は減少していたが、核内でSUMO化されている頻度が高まっていた。SUMO化は、IL-33が転写因子IRF1の分解を促進するのを防ぎ、それによって、in vivoにおいてT細胞とマクロファージの抗腫瘍活性を抑制するケモカインIL-8と免疫チェックポイントタンパク質PD-L1のIRF1依存的産生を可能にした。これらの知見は、IL-33の核因子機能の喪失によってHCCの免疫監視が部分的に損なわれることを示唆している。-LKF

要約

インターロイキン33(IL-33)は、分泌型サイトカインとしても核因子としても機能し、がんや免疫において多面的な役割をもつ。本稿でわれわれは、肝細胞がん(HCC)におけるIL-33の役割を調べ、翻訳後修飾がIL-33の核内活性を変化させ、HCCの免疫逃避を促進させることを同定した。患者のHCC組織では、正常な肝組織に比べて、IL-33量は全体的に減少していたが、核内に局在化している頻度は高まっていた。培養およびin vivoのヒトおよびマウスHCC細胞でIL-33を過剰発現させると、インターフェロン調節因子1(IRF1)のユビキチン依存的な分解が促進されることによって、転写レベルで増殖が阻害され、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の量が抑制された。しかし、E3リガーゼRanBP2によってIL-33のLys54をSUMO化させると、この相互作用は妨害された。IL-33のSUMO化は、HCC細胞およびHCC組織におけるIL-33の核局在化と相関した。培養およびin vivoのHCCでのSUMO化IL-33の増加は、IRF1を安定化し、PD-L1量とケモカインIL-8分泌量を増加させ、それによってそれぞれ、細胞傷害性T細胞の活性化を妨げ、マクロファージのM2極性化を促進した。IL-33のSUMO化部位を変異させると、このような作用は逆転し、腫瘍の増殖が抑制された。これらの知見は、HCC細胞において核内IL-33がSUMO化されると抗腫瘍免疫が損なわれることを示している。

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