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ブレブで生き延びるがん細胞

Blebby survivors

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
28 Mar 2023 Vol 16, Issue 778
DOI: 10.1126/scisignal.adh9176

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

A. D. Weems, E. S. Welf, M. K. Driscoll, F. Y. Zhou, H. Mazloom-Farsibaf, B.-J. Chang, V. S. Murali, G. M. Gihana, B. G. Weiss, J. Chi, D. Rajendran, K. M. Dean, R. Fiolka, G. Danuser, Blebs promote cell survival by assembling oncogenic signalling hubs. Nature 615, 517-525 (2023).

M. Reichman-Fried, E. Raz, Bleb protrusions help cancer cells to cheat death. Nature 615, 402-403 (2023).

細胞膜のブレブが、アノイキス細胞死への腫瘍細胞の耐性を可能にするシグナル伝達のハブを形成する

細胞が細胞外マトリックスまたは隣接細胞から脱離すると、通常、接着依存性の生存促進シグナル伝達が消失することにより「アノイキス」と呼ばれる1種のプログラム細胞死に至る。一方で腫瘍細胞は、組織から脱離して転移する際、アノイキスに対して耐性を獲得することができる(Reichman-FriedとRazのcommentary参照)。脱離した細胞は丸くなり、「ブレブ」と呼ばれる細胞膜の動的で半球型の突出構造を形成する。Weemsらは、ブレブから生じるシグナル伝達がアノイキスへの耐性を促進することを見いだした。in vitroにおいてMV3メラノーマ細胞をレクチンWGAで処理すると、ブレブの形成が阻害され、脱離細胞の生存率が低下した。画像検査から、蛍光標識した細胞骨格タンパク質のセプチンファミリーメンバー(SEPT6-GFP)がブレブに集合し、ブレブの辺縁部(細胞膜の湾曲が最大になっている部位)に豊富に存在していることが明らかになった。ブレブ形成を薬理学的に阻害すると、SEPT6-GFPの集合が抑制された。セプチン阻害剤で処理すると、脱離したメラノーマ細胞のアノイキス耐性が低下したが、ブレブの形成に影響はみられなかった。近接ラベリング試験からセプチン相互作用タンパク質としてNRASが同定され、これは、恒常的活性化型のNRAS変異体を発現している脱離したMV3メラノーマ細胞のライブセルイメージングにより確認された。未処理の脱離細胞と比較して、セプチン阻害剤で処理した脱離メラノーマ細胞では、ERKシグナル伝達の活性化が低下しているのみならず、活性型PI3KのNRASへの動員も低下していた。これは、セプチンと局在化NRASが生存促進性シグナル伝達を活性化させることに一致している。最後に、非悪性のマウス胚性線維芽細胞にドミナントネガティブのダイナミン変異体を発現させると、脱離後の長時間のブレブ形成がみられ、アノイキスに対する耐性に至った。まとめるとこれらのデータは、脱離細胞のブレブがシグナル伝達のハブとして機能して細胞の生存を促進することを示しており、この機構がアノイキス耐性を阻止するための治療標的となりえることを示唆している。

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2023年3月28日号

Editor's Choice

ブレブで生き延びるがん細胞

Focus

核内のホスホジエステラーゼの除去と核内cAMPシグナル伝達の増強による学習の後押し

Research Article

ROS産生を遮断すると急性骨髄性白血病の発がん性シグナル伝達が阻害されてプレシジョン療法への反応が増幅される

ホスホジエステラーゼ4Dのアレスチン依存性核外移行が学習と記憶に必要なGPCR誘導性の核内cAMPシグナル伝達を促進する

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