- ホーム
- ホスホジエステラーゼ4Dのアレスチン依存性核外移行が学習と記憶に必要なGPCR誘導性の核内cAMPシグナル伝達を促進する
ホスホジエステラーゼ4Dのアレスチン依存性核外移行が学習と記憶に必要なGPCR誘導性の核内cAMPシグナル伝達を促進する
Arrestin-dependent nuclear export of phosphodiesterase 4D promotes GPCR-induced nuclear cAMP signaling required for learning and memory
SCIENCE SIGNALING
28 Mar 2023 Vol 16, Issue 778
DOI: 10.1126/scisignal.ade3380
Joseph M. Martinez1, †, Ao Shen1, 2, †, Bing Xu1, 3, Aleksandra Jovanovic1, Josephine de Chabot1, Jin Zhang4, Yang K. Xiang1, 3, *
- 1 Department of Pharmacology, University of California at Davis, Davis, CA 95616, USA.
- 2 School of Pharmaceutical Sciences and the Fifth Affiliated Hospital, Guangzhou Medical University, Guangzhou 511436, China.
- 3 VA Northern California Health Care System, Mather, CA 95655, USA.
- 4 Department of Pharmacology, University of California at San Diego, San Diego, CA 92093, USA.
* Corresponding author. Email: ykxiang@ucdavis.edu
† These authors contributed equally to this work.
記憶すべき核外移行
学習と記憶の基礎をなす海馬ニューロンでは、セカンドメッセンジャーであるcAMPの核内集積によって遺伝子発現に変化が生じる。Martinezらは、β2-アドレナリン受容体の刺激により、cAMPを分解するホスホジエステラーゼPDE4D5の核外移行が誘導され、核内cAMPシグナル伝達と記憶固定が支援されることを見出した(GurevichとGurevichによるFocusも参照)。この作用には、β2-アドレナリン受容体がGRKを介してリン酸化され、それによって受容体がエンドサイトーシスされ、PDE4D5の核外移行を引き起こす足場タンパク質であるアレスチン3と会合することが必要であった。GRKリン酸化部位を欠損した変異受容体を発現するマウスは記憶障害を呈し、これはPDE4阻害剤によって軽減された。したがって、β2-アドレナリン受容体は、核内へのcAMP伝達を可能にすることによって、記憶固定を促進する。-WW
要約
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、学習と記憶に必要な最初期遺伝子の発現を促進する。今回われわれは、β2-アドレナリン受容体(β2AR)刺激により、セカンドメッセンジャーcAMPを分解する酵素であるホスホジエステラーゼ4D5(PDE4D5)の核外移行が誘導され、記憶固定が可能になることを示した。GPCRキナーゼ(GRK)によってリン酸化されたβ2ARのエンドサイトーシスにより、PDE4D5のアレスチン3依存性の核外移行が仲介され、この核外移行は、海馬ニューロンにおける記憶固定のための核内cAMPシグナル伝達と遺伝子発現に不可欠であることが明らかになった。アレスチン3とPDE4D5の会合を阻害すると、β2AR誘導性の核内cAMPシグナル伝達が妨げられたが、受容体のエンドサイトーシスには影響はなかった。GRKによってリン酸化されない型のβ2ARを発現するマウスにおいて、直接のPDE4阻害によりβ2AR誘導性の核内cAMPシグナル伝達が回復し、記憶障害が改善した。これらのデータは、エンドソームのGRKによってリン酸化されたβ2ARが、PDE4D5の核外移行を促進し、核内cAMPシグナル伝達、遺伝子発現の変化、記憶固定をもたらす仕組みを明らかにしている。本研究は、PDEの移行が、GPCR活性化の下流の特定の細胞内位置においてcAMPシグナル伝達を促進する機構であることも強調している。