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シロイヌナズナ(Arabidopsis)において防御シグナルまたは傷害により誘発され局所伝播する細胞質Ca2+の波は、個別の機構により伝播する
Local traveling waves of cytosolic Ca2+ elicited by defense signals or wounding are propagated by distinct mechanisms in Arabidopsis

SCIENCE SIGNALING
2 Dec 2025 Vol 18, Issue 915
DOI: 10.1126/scisignal.adw2270
Weiwei Zhang1, 2, Nilay Kumar2, 3, Jessica R. Helwig1, 2, Alexis Hoerter2, 3, Anjali S. Iyer-Pascuzzi1, 2, David M. Umulis2, 3, Elsje Pienaar2, 3, Christopher J. Staiger1, 2, 4, *
- 1 Department of Botany and Plant Pathology, Purdue University, West Lafayette, IN, USA.
- 2 EMBRIO Institute, Purdue University, West Lafayette, IN, USA.
- 3 Weldon School of Biomedical Engineering, Purdue University, West Lafayette, IN, USA.
- 4 Department of Biological Sciences, Purdue University, West Lafayette, IN, USA.
- * Corresponding author. Email: staiger@purdue.edu
Editor's summary
植物におけるパターン誘発免疫は、微生物または損傷関連分子パターン(MAMPまたはDAMP)により活性化されるパターン認識受容体の下流にある細胞内Ca2+シグナル伝達に依存している。Zhangらは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の子葉を用いて、MAMPおよびDAMP誘発性Ca2+波の特性評価を行った。これらの波は少数の表皮細胞から始まり、その後は緩徐に、ほぼ放射状のパターンで隣接する細胞に一定速度で伝播する。一方、単一細胞の傷害により誘発されたCa2+波はそれよりはるかに高速で遠くまで伝播するが、傷害から離れるにつれて速度が落ちる。この知見は、Ca2+波の異なるパターンが刺激特異的な防御応答に寄与している可能性を示唆している(GilroyによるFocus参照)。—Annalisa M. VanHook
要約
特異的な時空間的なパターンをもつ細胞質カルシウムイオン(Ca2+)のシグネチャーは、生物的および非生物的ストレスに対する植物の応答に重要な役割を果たしている。微生物または損傷関連分子パターン(それぞれMAMPまたはDAMP)が認識されると、パターン誘発免疫(植物による病原体からの防御の最前線)の誘導と伝播に不可欠な細胞質Ca2+のフラックスが、細胞、器官および植物体レベルで引き起こされる。本稿でわれわれは、シロイヌナズナの子葉を用いて単一細胞レベルのCa2+シグネチャーを定量的に評価したほか、均一なMAMPまたはDAMP処理で誘導されるCa2+波の局所伝播を評価した。MAMPおよびDAMPは表皮の敷石細胞において個別の局所的で時空間的なCa2+応答を誘導し、伝播するCa2+波は一貫して、ランダムに分布する細胞のサブセットから始まり、ほぼ放射状のパターンで拡がっていた。このような局所を伝播する波の伝播速度はゆっくりであったが、約1 μm/秒と一定しており、ごく限られた数の隣接細胞に拡がっていた。一方で、傷害誘導性のCa2+波は、Ca2+チャネルを活性化する分子の拡散によって伝播し、傷害を受けた細胞から速やかに遠ざかる拡散様の減衰パターンを示したが、時間および距離とともに減速していた。数学的モデリングでは、MAMPにより誘導される一定の波の速さを再現する、Ca2+誘導性のCa2+放出機構が支持された。これらの知見は、植物の防御に関連するCa2+シグナル伝達機構の理解、ならびに防御応答がどのように組織内で空間的に制限されているかについての理解を深めることに寄与するものである。
2025年12月2日号






