真菌が腸管の治癒を促す

Fungi facilitate gut healing

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SCIENCE SIGNALING
24 Feb 2026 Vol 19, Issue 926
DOI: 10.1126/scisignal.aeg5547

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: avanhook@aaas.org

Y. Gao, T. Wang, N. Nan, F. Tian, L. Tan, H. Yan, X. Peng, S. Zheng, Y. He, H. Zhang, H. Li, Q. Fan, C. Suo, W. Zhang, Y. Shi, W. Du, J. Jiang, H. Li, M. Zhang, J. Wu, H. Zhou, Y. Cheng, Y. Nian, X. Wang, X. Sun, R. Sheng, Q. Zheng, C. Ding, Fungal commensal promotes intestinal repair via its secreted peptide in mice. Nat. Microbiol. 11, 476–491 (2026).

R. A. Drummond, Commensal fungus to the rescue of gut injury. Nat. Microbiol. 11, 339–340 (2026).

マウス共生真菌から分泌されるタンパク質が腸管の修復を促進する

腸内細菌叢の研究では一般的に細菌が主役であるが、腸管には真菌も存在し、腸管内で微生物群集の構成に影響して宿主の免疫に寄与している(Drummondのcommentary参照)。Gaoらは、真菌の共生が腸上皮の修復を促進することで宿主の健康に寄与しているという、もうひとつのエビデンスを提供した。マウスの共生真菌であるKazachstania pintolopesiiKp)は、マウスとヒトの腸オルガノイドにおいて細胞の分化を刺激し、マウスではデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎において腸上皮の再生を改善した。分泌型Kpタンパク質Ygp1またはこれに由来する12-アミノ酸ペプチドであるCD12は、オルガノイドに対するKpの作用を再現した。急性と慢性両方のDSS誘発性大腸炎において、CD12で処理することにより治癒が改善し、致死量のDSSから動物が保護された。また、CD12を分泌するよう遺伝子操作した大腸菌(Escherichia coli)は腸管に定着し、DSSまたは化学療法薬5-フルオロウラシルによる腸管の損傷を軽減した。KpまたはCD12で処理されたオルガノイドでは、腸の再生を促進するというYap1の役割と一致して、転写コレギュレーターYap1の存在量およびYap1標的遺伝子の発現が増加した。オルガノイドにおけるCD12の効果は、Yap1 mRNAにも結合して翻訳を促進する解糖系酵素であるα-エノラーゼ(ENO1)との相互作用によってもたらされていた。CD12は腸陰窩細胞で内因性ENO1と相互作用し、in vitroおよび陰窩においてYap1転写産物へのENO1の結合を増強していた。Kpはヒトの一般的な共生真菌ではないものの、ヒトのその他の共生真菌はYgp1遺伝子を有し、さらに病原性の菌種には存在していない。Ygp1またはCD12がヒトの腸管修復を促進できるか否かはまだ明らかではないが、CD12はたとえ高用量でもマウスに毒性はないことから、遺伝子操作したCD12発現プロバイオティクスがトランスレーショナルリサーチの観点から有用である可能性を示唆している。

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