- ホーム
- 自己持続的な異質性が膵管腺がん(PDAC)を促進する
自己持続的な異質性が膵管腺がん(PDAC)を促進する
Self-sustained heterogeneity drives PDAC

SCIENCE SIGNALING
26 May 2026 Vol 19, Issue 939
DOI: 10.1126/scisignal.aei9843
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: avanhook@aaas.org
S. R. Torborg, J. Y. Kim, A. Singhal, O. Grbovic-Huezo, M. Holm, K. Wu, X. Han, Y.-J. Ho, C. Haglund, M. J. Mitchell, S. W. Lowe, L. E. Dow, K. L. Pitter, F. J. Sanchez-Rivera, A. Levchenko, T. Tammela, Disruption of WNT/Notch signaling in pancreatic cancer reveals tumors depend on the intricate equilibrium of malignant cell states. Dev. Cell 61, 1012–1027.e8 (2026).
N. K. Lytle, L. D. Wood, The want for Wnt: Pancreatic cancer assembles a self-sustaining Wnt-signaling ecosystem. Dev. Cell 61, 971–972 (2026).
膵管腺がん(PDAC)においてWnt分泌細胞とWnt受容細胞の内在的バランスが腫瘍の増殖を支える。
腫瘍内異質性は、がんの進行と薬剤耐性に関与する。膵管腺がん(PDAC)腫瘍は、転写的に異なる細胞亜集団で構成され、患者間で類似している。Torborgらは、ヒトPDAC腫瘍で観察される腫瘍内異質性の一部を再現する遺伝子改変マウスモデルにおいて、腫瘍細胞の約半数がWNTを産生し、WNTに反応する細胞は少数しか存在しないがWNT産生細胞に近接していることを明らかにした。著者らはマウスモデルをさらに改変してWNT分泌(WNT-S)細胞とWNT受容(WNT-R)細胞に対する蛍光レポーターを組み込み、細胞系譜の追跡と条件的な除去を可能にした。腫瘍由来細胞のin vivoおよび三次元球状培養において、WNT-Sは腫瘍増殖の主要なドライバーであり、増殖性のより低いWNT-R集団の維持に必要であった。WNT-S状態は安定していたが、WNT-R状態は不安定でWNT-S細胞へと分化形質転換した。それでも、腫瘍はこの2つの細胞集団間の均衡を維持していた。WNT-S細胞のサブセットがNotchリガンドDLL1も産生し、近隣細胞上のNotchを活性化してNotchシグナル伝達メディエータNRARPを産生させることによって、WNT-R状態を維持し、WNT-S状態を抑制した。ヒトPDAC腫瘍には、マウスモデルにみられるのと同様のWNT-S細胞画分とWNT-R細胞画分だけでなく、DLL1+ WNT-S細胞画分とNRARP+ WNT-R細胞画分も含まれていた。これらの知見は、過渡的な幹細胞様WNT-R細胞集団が腫瘍の増殖を持続するのに最適な細胞状態バランスを維持するのに適した微小環境としてWNT-S細胞が機能することを示唆しており、これは近隣細胞間のWntおよびNotchシグナル伝達が組織恒常性のために幹細胞の維持と分化を調節する他の状況を連想させる。Wntシグナル伝達はPDACの発症と進行を促進し、生存率の低下と関連するが、この機構が患者全体におけるWnt依存性にどの程度まで関与しているのかは、まだ解明されていない(LytleおよびWood参照)。
2026年5月26日号






