転移の休眠にはSTINGが必要

Metastatic dormancy needs STING

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
11 Apr 2023 Vol 16, Issue 780
[DOI: 10.1126/scisignal.adi1372]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

J. Hu, F. J. Sánchez-Rivera, Z. Wang, G. N. Johnson, Y. Ho, K. Ganesh, S. Umeda, S. Gan, A. M. Mujal, R. B. Delconte, J. P. Hampton, H. Zhao, S. Kottapalli, E. de Stanchina, C. A. Iacobuzio-Donahue, D. Pe'er, S. W. Lowe, J. C. Sun, J. Massagué, STING inhibits the reactivation of dormant metastasis in lung adenocarcinoma. Nature 10.1038/s41586-023-05880-5 (2023).

がん細胞におけるSTINGの活性が、休眠中の転移の進行を抑制する

大半のがん死亡は転移性疾患によるものであり、そのような転移は長期間の休眠後に生じることが多い。休眠中、静止期の細胞は、免疫細胞によって検出されるリガンドの発現をダウンレギュレーションすることで、免疫を介した標的化を回避している。一方、休眠から覚めた細胞は再度、免疫監視を受けやすくなる。Huらは、休眠中の転移進行抑制の根底にある免疫機構の特定を試みた。緩慢型の肺腺がん細胞において免疫刺激因子を標的とするCRISPRスクリーニングを設計し、その上で細胞をマウスに移植した。その結果、サイトゾルの二本鎖DNAの感知に応じて活性化されるインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)が、がん細胞の休眠からの覚醒を抑制している可能性が明らかとなった。STINGの活性化は免疫刺激遺伝子の発現を亢進し、さらに、STING標的遺伝子の発現は、非休眠中の転移巣由来細胞に比べて再度覚醒した細胞において増大していた。マウスにおいて肺腺がん細胞のSTINGをノックアウトすると、転移のアウトブレイクが増大し、無転移生存期間が短縮した。転移に対するSTINGの効果は、ナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8+T細胞の存在に依存していた。また、転移のブレイクスルー中にDNAの過剰メチル化によってSTINGの発現が低下した。緩慢型肺腺がんのマウスモデルにおいて、STINGアゴニストの投与により休眠細胞の転移再出現が抑制された。本研究から、静止状態の腫瘍細胞の休眠からの覚醒の根底にある機構に関して、また、覚醒した休眠細胞で免疫標的への脆弱性を回復させるための戦略について洞察が得られた。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2023年4月11日号

Editor's Choice

転移の休眠にはSTINGが必要

Research Article

マウス脊髄でHSP90を阻害するとAMPKに媒介される負のフィードバックループが抑制されることによってオピオイドシグナル伝達が促進される

活性化免疫シナプスへのSHP-1局在化はMHCクラスI欠損症のNK細胞寛容を促進する

最新のEditor's Choice記事

2024年4月9日号

伸張を感知して食欲を抑える

2024年4月2日号

アルツハイマー病に関連する脂肪滴

2024年3月26日号

傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

2024年3月19日号

痒みを分極化する

2024年3月12日号

抗体の脂肪への蓄積による老化