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マウス脊髄でHSP90を阻害するとAMPKに媒介される負のフィードバックループが抑制されることによってオピオイドシグナル伝達が促進される

HSP90 inhibition in the mouse spinal cord enhances opioid signaling by suppressing an AMPK-mediated negative feedback loop

Research Article

SCIENCE SIGNALING
11 Apr 2023 Vol 16, Issue 780
[DOI: 10.1126/scisignal.ade2438]

Katherin A. Gabriel1 and John M. Streicher1, 2, *

  1. 1 Department of Pharmacology, College of Medicine, University of Arizona, Tucson, AZ, USA.
  2. 2 Comprehensive Pain and Addiction Center, University of Arizona, Tucson, AZ, USA.

* Corresponding author. Email: jstreicher@arizona.edu

オピオイドの自己制御

オピオイドは、急性疼痛の管理に有効であるが、耐性により使用量を増加させると有害な副作用を引き起こしうる。GabrielとStreicherは、オピオイドが自己制限経路を活性化し、その無効化によりオピオイドの効果を促進できることを明らかにした。マウス脊髄で、オピオイドはキナーゼERKおよびAMPKを活性化した。ただし、ERKはマウスの疼痛刺激に対するオピオイドの効果を促進したが、AMPKはERKを阻害することによってオピオイドの効果を低下させた。AMPKまたはシャペロンタンパク質HSP90(AMPKを安定化させる)を遮断すると、オピオイドを投与されたマウスの疼痛感受性が軽減されたことから、患者におけるオピオイドの有効性を改善させる可能性のある方法が示唆された。
—LKF

要約

オピオイドや他のμオピオイド受容体のアゴニストは、急性疼痛の管理に有効であるが、慢性的に使用すると耐性を引き起こして有効性を制限しうる。われわれは以前に、マウス脊髄のシャペロンタンパク質HSP90を阻害すると、キナーゼERKの活性化の促進が関与する形でオピオイドの抗侵害受容性作用が促進されることを報告した。本稿でわれわれは、その基礎となる機構として、キナーゼAMPKに媒介される負のフィードバックループの軽減が関与することを明らかにした。HSP90阻害薬17-AAGを雄および雌マウスに髄腔内投与すると、脊髄内のAMPKのβ1サブユニット量が減少した。17-AAGとモルヒネの併用による抗侵害受容性作用は、AMPK活性化薬を髄腔内投与すると抑制され、AMPK阻害薬によって促進された。オピオイドを投与すると、脊髄後角内のリン酸化AMPK量が増加し、そこでリン酸化AMPKは神経細胞マーカーおよび神経ペプチドCGRPと共局在した。CGRP陽性神経細胞でAMPKをノックダウンさせると、モルヒネの抗侵害受容性作用が促進されたことから、AMPKがHSP90阻害とERK活性化の間のシグナル伝達を媒介していることが実証された。これらのデータは、AMPKが脊髄のCGRP神経細胞においてオピオイドに誘導される負のフィードバックループを媒介していることと、HSP90を阻害することでこのループを無効にするとオピオイドの効果が促進されうることを示すものである。

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