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- レポーターに基づくスクリーニングによってRAS-RAF変異を大腸がんにおける活性型RAS阻害薬耐性のドライバーとして同定
レポーターに基づくスクリーニングによってRAS-RAF変異を大腸がんにおける活性型RAS阻害薬耐性のドライバーとして同定
Reporter-based screening identifies RAS-RAF mutations as drivers of resistance to active-state RAS inhibitors in colorectal cancer
SCIENCE SIGNALING
22 Jul 2025 Vol 18, Issue 896
DOI: 10.1126/scisignal.adr3738
Oleksandra Aust1, Moritz R. T. Thiel1, Eric Blanc2, Mareen Lüthen1, Viola Hollek1, Rosario Astaburuaga-García1, Bertram Klinger1, Francisca Böhning1, Alexandra Trinks3, Dieter Beule2, Björn Papke1, 4, 5, David Horst1, 4, Nils Blüthgen1, 4, Christine Sers1, 4, Channing J. Der5, Markus Morkel1, 3, 4, *
- 1 Institute of Pathology, Charité–Universitätsmedizin Berlin, Corporate Member of Freie Universität Berlin and Humboldt-Universität zu Berlin, Charitéplatz 1, 10117 Berlin, Germany.
- 2 Core Unit Bioinformatics (CUBI), Berlin Institute of Health at Charité–Universitätsmedizin Berlin, Corporate Member of Freie Universität Berlin and Humboldt-Universität zu Berlin, 10117 Berlin, Germany.
- 3 Bioportal Single Cells, Berlin Institute of Health at Charité–Universitätsmedizin Berlin, Corporate Member of Freie Universität Berlin and Humboldt-Universität zu Berlin, 10117 Berlin, Germany.
- 4 German Cancer Consortium (DKTK) Partner Site Berlin, German Cancer Research Center (DKFZ), 69120 Heidelberg, Germany.
- 5 University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC 27599, USA.
- * Corresponding author. Email: markus.morkel@charite.de
Editor's summary
RASに変異を有するがんは、標的治療薬に対する耐性を獲得することが多い。活性型RASを標的とするRAS(ON)阻害薬と呼ばれる新規阻害薬の臨床開発が進行中である。Austらは、KRAS変異型大腸がん細胞におけるRAS(ON)阻害薬に対する耐性が、経路レポーターに基づく細胞選別によってのみ耐性ドライバー変異として同定された多様な二次変異を介して生じることを明らかにした。より詳細なプロファイリングによって、二次的なRAF1変異を有する細胞の相乗的な組み合わせが予測された。これらの知見は、医薬品開発における細胞選別スクリーニングの有用性を示し、RAS(ON)阻害薬耐性を克服するための基盤を築くものである。—Leslie K. Ferrarelli
要約
治療によって誘導される獲得耐性は、大腸がん(CRC)における変異特異的なKRAS阻害薬の臨床有効性を制限する。われわれは、広域スペクトルな活性型RAS阻害薬にも同様の制限が当てはまるかどうかを調べた。そして、処置によってRAS-RAF-MEK-ERK経路が阻害され、増殖が停止し、場合によってはアポトーシスが誘導されたことから、KRAS変異型CRC細胞株がRAS(ON)マルチ選択性RAS阻害薬RMC-7977に感受性を示すことを見出した。RMC-7977は、最初はERK活性のコンパートメント特異的な2色レポーターの活性を低下させたが、長期にわたる用量増加後にはレポーターの再活性化がみられた。これらの薬剤耐性細胞集団では、リン酸化タンパク質量、転写活性、KRASのY71H変異やRAF1のS257L変異などのゲノム変異に特徴的なパターンが認められた。薬剤感受性CRC細胞においてKRASG13D, Y71HまたはRAF1S257Lを遺伝子導入により発現させると、RMC-7977に対する耐性が誘導された。RMC-7977耐性でRAF1S257Lを有するCRC細胞は、RASおよびRAFの同時阻害に相乗的な感受性を示した。これらの知見は、治療抵抗性の複雑な状況を解明するにあたって、レポーターを用いたスクリーニングと単一細胞解析の組み合わせによる威力を実証している。この戦略は、耐性がん細胞の出現に対抗する、臨床的に意義のある組み合わせ治療を開発する機会を提供するものである。