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ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する

Astrocytic RIPK3 exerts protective anti-inflammatory activity in mice with viral encephalitis by transcriptional induction of serpins

Research Article

SCIENCE SIGNALING
15 Jul 2025 Vol 18, Issue 895
DOI:10.1126/scisignal.adq6422

Marissa Lindman1, Irving Estevez1, Eduard Marmut1, Evan M. DaPrano1, Tsui-Wen Chou1, Kimberly Newman2, Colm Atkins1, Natasha M. O’Brown1, Brian P. Daniels1, *

  1. 1 Department of Cell Biology and Neuroscience, Rutgers University, Piscataway, NJ 08854, USA.
  2. 2 Brain Health Institute, Rutgers University, Piscataway, NJ 08854, USA.
  3. * Corresponding author. Email: b.daniels@rutgers.edu

Editor's summary

フラビウイルスは致死的なCNS感染症を引き起こす可能性があることから、フラビウイルスによる病態形成の理解を深めることが治療標的候補の同定に役立つと考えられる。フラビウイルス感染が生じている間、ニューロンにおいてキナーゼRIPK3が炎症促進性の役割を果たしていることに注目し、Lindmanらはマウスモデルを用いて、血液脳関門(BBB)の維持を助けるアストロサイトのRIPK3の役割を検討した。マウスにフラビウイルス感染症が認められる間、RIPK3はアストロサイトにおけるSerpina3Nの発現を刺激し、BBBの完全性を促進することでCNSへの免疫細胞の動員を制限し、それにより生存率を上昇させていた。まとめるとこれらの知見は、CNSのウイルス感染が生じている間、アストロサイトのRIPK3が宿主の防御を促進していることを示唆している。—John F. Foley

要約

フラビウイルスは中枢神経系(CNS)への感染能を有することから、公衆衛生上の重大な脅威となっている。受容体相互作用タンパク質キナーゼ3(RIPK3)は、CNSのウイルス感染が生じている間、神経炎症を促進する中枢性の調節因子であり、この役割は、ネクロトーシスの誘導におけるその古典的働きとは独立している。本稿でわれわれは、遺伝学的ツールを用いてマウスにRIPK3のアストロサイト特異的欠失、過剰発現および化学遺伝学的活性化を誘導し、アストロサイトのRIPK3が抗炎症性機能をもつことを実証した。フラビウイルス脳炎が認められるマウスでは、アストロサイトのRIPK3活性化によりCNSへの免疫細胞の動員が制限されることで、宿主の生存が促進された。RIPK3は炎症促進性の転写プログラムを誘導するものの、アストロサイトのRIPK3はプロテアーゼ阻害因子であるSerpinA3Nの存在量を増大させることで神経炎症を抑制し、これによりフラビウイルス脳炎が生じている間の血液脳関門の完全性が保持され、白血球浸潤が軽減し、生存率の成績が改善した。これらの知見は、これまで認識されていなかった、病的な神経炎症の抑制におけるアストロサイトのRIPK3の役割を浮き彫りにしている。

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2025年7月15日号

Research Article

ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する

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