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骨髄系およびリンパ系細胞における腫瘍性タンパク質TEL-ABLの自己リン酸化はアロステリックABL阻害剤アシミニブに対する抵抗性を与える

Autophosphorylation of oncoprotein TEL-ABL in myeloid and lymphoid cells confers resistance to the allosteric ABL inhibitor asciminib

Research Article

SCIENCE SIGNALING
15 Jul 2025 Vol 18, Issue 895
DOI: 10.1126/scisignal.adt5931

Serena Muratcioglu1, Christopher A. Eide2, Chien-Lun Hung1, Kent Gorday3, †, Emily Sumpena4, ‡, Wenqi Zuo4, §, Jay T. Groves5, 6, Brian J. Druker2, John Kuriyan1, 7, 8, *

  1. 1 Department of Biochemistry, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA.
  2. 2 Division of Hematology and Medical Oncology, Knight Cancer Institute, Oregon Health and Science University, Portland, OR, USA.
  3. 3 Biophysics Graduate Group, University of California, Berkeley, Berkeley, CA, USA.
  4. 4 Department of Molecular and Cell Biology, University of California, Berkeley, Berkeley, CA, USA.
  5. 5 Department of Chemistry, University of California, Berkeley, Berkeley, CA, USA.
  6. 6 Division of Molecular Biophysics and Integrated Bioimaging, Lawrence Berkeley National Laboratory, Berkeley, CA, USA.
  7. 7 Department of Chemistry, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA.
  8. 8 Department of Cell and Developmental Biology, Vanderbilt University, Nashville, TN, USA.
  9. * Corresponding author. Email: john.kuriyan@vanderbilt.edu
  10. † Present address: insitro, San Francisco, CA, USA.
  11. ‡ Present address: Department of Medical Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA.
  12. § Present address: Department of Pediatrics, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA, USA.

Editor's summary

発がん性融合タンパク質のBCR-ABLおよびTEL-ABLは、チロシンキナーゼABLの恒常的活性化を介して血液悪性腫瘍を引き起こす。いずれの融合タンパク質もATP競合型チロシンキナーゼ阻害剤に感受性を示すが、Muratciogluらは、BCR-ABLのみが、ABLを自己抑制構造で安定化させるアロステリックABL阻害剤であるアシミニブに感受性を示すことを見出した。リンパ系および骨髄系細胞において、BCR-ABLは主に二量体を形成した一方、TEL-ABLは高次オリゴマーを形成し、この高次オリゴマーでは、ABLのトランス自己リン酸化によって自己抑制構造が崩れた。したがって、融合パートナーが、発がん性ABL融合タンパク質のアロステリックABL阻害剤に対する感受性を決定することができる。—Annalisa M. VanHook

要約

ABL1BCRまたはTELに融合させる染色体転座は、ヒトの白血病の原因となる。BCR-ABLおよびTEL-ABL融合タンパク質では、オリゴマー化とABLのSH3ドメインの自己抑制的なミリストイル化部位の消失によって、ABLのチロシンキナーゼ活性が増加する。われわれは、ABLキナーゼドメインのミリストイル結合部位に結合するBCR-ABLアロステリック阻害剤のアシミニブが、これらの融合タンパク質を阻害する能力を評価した。2つの融合タンパク質のABL成分は同一の配列を有するが、細胞増殖アッセイにおいて、アシミニブのTEL-ABLに対する効果は、BCR-ABLに対する効果よりはるかに小さかった。一方、イマチニブやポナチニブなどのATP競合型チロシンキナーゼ阻害剤は、両方の融合タンパク質に同等の効果を示した。結合したアシミニブを取り囲むABLキナーゼドメインのヘリックスが、BCR-ABLの薬剤に対する感受性に必要であったが、TEL-ABLの感受性には影響を及ぼさなかったことから、BCR-ABLにおいてアシミニブが関与する天然の自己抑制機構が、TEL-ABLでは崩壊していることが示唆された。単一分子顕微鏡により、BCR-ABLは細胞内で主に二量体として存在する一方、TEL-ABLは高次オリゴマーを形成し、この高次オリゴマーは、ABLのSH3ドメインの調節性リン酸化部位(Tyr89)を含む、トランス自己リン酸化を促進することが示された。リン酸化されていないTEL-ABLは本質的にアシミニブによる阻害に感受性を示したが、Tyr89がリン酸化するとABLの自己抑制構造が解体され、それによりアシミニブの結合が妨げられた。われわれの結果は、リン酸化が、ABL融合タンパク質のアロステリック阻害に対する感受性の有無を決定することを示している。

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2025年7月15日号

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