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腫瘍浸潤性の侵害受容ニューロンが免疫抑制を促進する
Tumor-infiltrating nociceptor neurons promote immunosuppression
SCIENCE SIGNALING
5 Aug 2025 Vol 18, Issue 898
DOI: 10.1126/scisignal.ads7889
Anthony C. Restaino1, 2, †, Maryam Ahmadi3, †, ‡, Tuany Eichwald3, 4, †, Amin Reza Nikpoor3, Austin Walz1, Mohammad Balood3, Sebastien Talbot3, 4, Paola D. Vermeer1, 5, *
- 1 Cancer Biology and Immunotherapies Group, Sanford Research, Sioux Falls, SD 57104, USA.
- 2 Sanford School of Medicine, University of South Dakota, Sioux Falls, SD 57104, USA.
- 3 Department of Biomedical and Molecular Sciences, Queen’s University, Kingston, ON K7L 3N6, Canada.
- 4 Department of Physiology and Pharmacology, Karolinska Institutet, Solna 171 77, Sweden.
- 5 Department of Surgery, Sanford School of Medicine, University of South Dakota, Sioux Falls, SD 57104, USA.
- † These authors contributed equally to this work.
- ‡ Present address: McGill University, Montreal, Quebec H3A 0G4, Canada.
- * Corresponding author. Email: Paola.Vermeer@sanfordhealth.org
Editor's summary
腫瘍微小環境の感覚ニューロンは、疼痛と疾患の進行に寄与する。Restainoらは、それらの感覚ニューロンがさらに、腫瘍と協働して抗腫瘍免疫を抑制することを見出した(BoydとBornigerによるFocusを参照)。培養中のメラノーマおよび頭頸部がん細胞やin vivoのマウス腫瘍は、感覚ニューロンを積極的に動員し、続いて感覚ニューロンが骨髄系由来サプレッサー細胞の分化と動員を誘導し、腫瘍による浸潤性T細胞の抑制を増強した。この多細胞クロストークは、腫瘍細胞からの小型細胞外小胞とニューロンからの炎症性サイトカインIL-6が関与する、フィードフォワード分泌機構によって仲介された。これらの結果は、腫瘍微小環境において免疫逃避を促進する、感覚ニューロンの積極的な役割を明らかにするものである。—Leslie K. Ferrarelli
要約
腫瘍から放出される小型細胞外小胞(sEV)は、侵害受容ニューロンを腫瘍床に動員する。今回われわれは、頭頸部がんおよびメラノーマのマウスモデルにおいて、これらのニューロンを除去すると、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)の浸潤が減少することを見出した。さらに、sEV欠損腫瘍は、侵害受容ニューロンを欠損したマウスにおいて進行しなかった。われわれは、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)およびメラノーマにおいて、腫瘍浸潤性の侵害受容器と免疫細胞の相互作用を検討した。がん由来のsEVに曝露されたマウス後根神経節(DRG)ニューロンでは、サブスタンスP、IL-6、損傷関連ニューロンマーカーの分泌量が増加した。患者由来のsEVはDRGニューロンをカプサイシンに感作させたことから、侵害受容器の応答性の増強が示唆された。さらに、sEVと培養した侵害受容器は、CD8+ T細胞において免疫抑制状態を誘導した。ニューロンとがん細胞の共培養からの馴化培地とインキュベーションすると、初代培養骨髄細胞においてMDSCのマーカーの発現が増加し、抑制機能が高まり、ニューロン馴化培地とがんsEVの組み合わせによって、T細胞におけるチェックポイント受容体発現が促進された。総合すると、これらの結果は、侵害受容ニューロンがCD8+ T細胞疲弊を促進し、HNSCCおよびメラノーマへのMDSCの浸潤を増強することを明らかにしている。したがって、侵害受容器を標的とすることが、がんにおける有害な神経免疫クロストークを阻害し、抗腫瘍免疫を増強するための戦略となる可能性がある。