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活性化免疫シナプスへのSHP-1局在化はMHCクラスI欠損症のNK細胞寛容を促進する

SHP-1 localization to the activating immune synapse promotes NK cell tolerance in MHC class I deficiency

Research Article

SCIENCE SIGNALING
11 Apr 2023 Vol 16, Issue 780
[DOI: 10.1126/scisignal.abq0752]

Laurent Schmied1, †, Thuy T. Luu1, †, Jonas N. Søndergaard2, Sophia H. Hald1, Stephan Meinke1, Dara K. Mohammad1, 3, Sunitha B. Singh4, Corinna Mayer1, Giovanna Perinetti Casoni1, Michael Chrobok1, Heinrich Schlums1, Giorgia Rota5, Hieu M. Truong1, Lisa S. Westerberg4, Greta Guarda6, Evren Alici1, Arnika K. Wagner1, Nadir Kadri1, Yenan T. Bryceson1, 7, 8, Mezida B. Saeed4, Petter Höglund1, 7, *

  1. 1 Center for Hematology and Regenerative Medicine (HERM), Department of Medicine Huddinge, Karolinska Institutet, NEO building, Blickagangen 16, S-141 57 Stockholm, Sweden.
  2. 2 Center for Infectious Disease Education and Research (CIDER), Osaka University, Suita 565-0871, Japan.
  3. 3 Department of Food Technology, College of Agricultural Engineering Sciences, Salahaddin University-Erbil, Erbil KRG-Kurdistan Region, Iraq.
  4. 4 Department of Microbiology, Tumor and Cell Biology, Karolinska Institutet, Biomedicum, Solnavagen 9, S-171 65 Stockholm, Sweden.
  5. 5 Department of Biochemistry, University of Lausanne, 1066 Epalinges, Switzerland.
  6. 6 Universita della Svizzera Italiana, Faculty of Biomedical Sciences, Institute for Research in Biomedicine, 6500 Bellinzona, Switzerland.
  7. 7 Clinical Immunology and Transfusion Medicine, Karolinska University Hospital, Huddinge C2:66, S-141 86 Stockholm, Sweden.
  8. 8 Broegelmann Research Laboratory, Department of Clinical Sciences, University of Bergen, Jonas Lies vei 87, Laboratory Building 5th floor, N-5021 Bergen, Norway.

* Corresponding author. Email: petter.hoglund@ki.se

† These authors contributed equally to this work.

NK細胞教育には場所が重要

ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識して殺す。NK細胞の活性化は、ストレスにより誘導される細胞リガンドを認識する活性化受容体と、自己マーカーおよび寛容の決定因子であるMHCクラスI(MHC-I)分子を認識する抑制性受容体との間のシグナル伝達のバランスに依存する。NK細胞の発生時、抑制性受容体シグナル伝達は、NK細胞が自己を許容し、活性化リガンドに応答できるようにする。これは教育として知られる過程である。Schmiedらは、教育を受けていないマウスNK細胞と教育を受けたマウスNK細胞を比較し、教育によって、通常はNK細胞の活性化を阻害するチロシンホスファターゼSHP-1の細胞内局在が変化することを発見した。教育の間、抑制性受容体はSHP-1を隔離することから、NK細胞とその標的の間の活性化免疫シナプスにSHP-1が蓄積するのを防ぐことで標的細胞の死滅が促進されるというモデルが示唆される。これらの知見は、教育を介したNK細胞シナプスにおけるSHP-1の空間的パターン形成が自己寛容を促進する可能性があることを示唆している。—JFF

要約

ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルスに感染した細胞や腫瘍を認識する。NK細胞の機能は、受容体の活性化、腫瘍またはウイルスからの生成物の認識、および主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC-I)分子を認識する抑制性受容体(KIR/Ly49など)からのバランスのとれたシグナル伝達に依存する。KIR/Ly49シグナルは、自己寛容を維持するだけでなく、NK細胞教育として知られる過程でMHC-Iが低い標的細胞に対する反応性も伝達する。今回、NK細胞の寛容と教育がチロシンホスファターゼSHP-1の細胞内局在によって決定されることを発見した。MHC-I分子を欠くマウスでは、教育を受けていない自己寛容性のLy49A+ NK細胞では活性化免疫シナプスにSHP-1が蓄積し、そこでSHP-1はF-アクチンおよびシグナル伝達アダプタータンパク質SLP-76と共局在した。Ly49A+ NK細胞がMHC-I分子H2Ddにより教育されると、SHP-1のシナプス蓄積が減少し、それに付随して活性化受容体からのシグナル伝達が増強された。教育は、SHP-1をコードするPtpn6の転写の減少にも関連していた。さらに、シナプスでのSHP-1の蓄積は、H2Dd教育を受けた受容体Ly49G2をもつNK細胞では減少したが、非教育受容体Ly49Iをもつ細胞では減少しなかった。シナプス外でのLy49AとSHP-1の共局在化は、教育を受けていないNK細胞と比較して、教育を受けた細胞でより頻繁であり、NK細胞教育でのシナプスのSHP-1蓄積防止におけるLy49Aの役割が示唆された。このように、活性化NK細胞シナプスにおけるSHP-1の明確なパターン形成が、NK細胞寛容を決定する可能性がある。

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