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マイコバクテリア細胞壁における偽キナーゼの役割が新たになる

A Pseudokinase Debut at the Mycobacterial Cell Wall

Perspectives

Sci. Signal., 24 January 2012
Vol. 5, Issue 208, p. pe3
[DOI: 10.1126/scisignal.2002785]

Digby F. Warner* and Valerie Mizrahi*

MRC/NHLS/UCT Molecular Mycobacteriology Research Unit and DST/NRF Centre of Excellence for Biomedical Tuberculosis Research, Institute of Infectious Disease and Molecular Medicine, and Department of Clinical Laboratory Sciences, Faculty of Health Sciences, University of Cape Town, Private Bag X3, Rondebosch 7701, Cape Town, South Africa.

* Corresponding authors. E-mail: digby.warner@uct.ac.za (D.F.W.); valerie.mizrahi@uct.ac.za (V.M.)

要約:結核の原因菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は、細胞質膜と外側の細胞壁から成る複雑な細胞エンベロープを有する。このような特徴的構造の構造学的および生化学的組成の解明は進んでいるにもかかわらず、細胞壁の恒常性を確実にしている過程についてはあまりわかっていない。新たな知見から、ペプチドグリカン生合成に必要な内在性膜タンパク質MviNと、フォークヘッド関連(forkhead-associated; FHA)ドメインを有するタンパク質FhaAを含む調節複合体の形成の調節に、マイコバクテリアにとって必須のセリン-トレオニンキナーゼ(STPK)であるPknBが関連することが示唆された。そこで、ペプチドグリカン由来のムロペプチドのシグナルが、PknBによって媒介されるMviNの偽キナーゼドメインのリン酸化の引き金となり、次にこの偽キナーゼドメインがFHA含有調節タンパク質を動員して、細胞の極と隔壁においてペプチドグリカン生合成を阻害するというモデルが描かれた。この経路における中心的調節因子としてPknBを確立する際には、このモデルは、マイコバクテリアの基本的な過程の連動においてこのSTPKネットワークが重要な役割を果たすことを強く示唆している。また、このモデルは、触媒として不活性で高度に多様化したキナーゼ相同ドメインを持つものとしてMviNを特定し、細胞壁代謝の中心的存在としての偽キナーゼを確立している。

D. F. Warner, V. Mizrahi, A Pseudokinase Debut at the Mycobacterial Cell Wall. Sci. Signal. 5, pe3 (2012).

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2012年1月24日号

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