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翻訳後修飾
まずスルフヒドリル化、次にニトロシル化

First Sulfhydration, Then Nitrosylation

Editor's Choice

Sci. Signal., 24 January 2012
Vol. 5, Issue 208, p. ec26
[DOI: 10.1126/scisignal.2002879]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

N. Sen, B. D. Paul, M. M. Gadalla, A. K. Mustafa, T. Sen, R. Xu, S. Kim, S. H. Snyder, Hydrogen sulfide-linked sulfhydration of NF-κB mediates its antiapoptotic actions. Mol. Cell 45, 13-24 (2012). [PubMed]

転写因子の核因子κB(NF-κB)は、炎症シグナルに寄与しており、アポトーシスを抑制するタンパク質をコードする遺伝子の発現を刺激することによって抗アポトーシス作用を発揮することがある。NF-κBのp65サブユニットは、サイトカインの腫瘍壊死因子α(TNF-α)に応答してニトロシル化され、転写活性を抑制される。Senらは、NO修飾の標的になっているのと同じ残基が硫化水素(H2S)による修飾の標的でもあることを示す。TNF-αはH2Sの産生を刺激し、H2S合成に関与する酵素であるシスタチオニンγリアーゼ(CSE)の量を増大させ、肝臓および腹腔マクロファージでのアポトーシスを促進した。このような応答のすべてが、CSEノックアウトマウスでは大きく低下するか消失するかした。CSEノックアウトマウスでは、TNF-αに応答するNF-κBのDNA結合が低下し、抗アポトーシス遺伝子標的の誘導も低下した。新たに開発されたアッセイを用いて、著者らはp65の相対的なスルフヒドリル化とニトロシル化を定量し、これら2つの修飾の時間経過が逆であることを見いだした。すなわち、スルフヒドリル化は、TNF-αに対する初期応答の段階で発生し、その後、ニトロシル化が増大するにつれて低下した。このような時間経過は、CSEの誘導(前半)およびNO合成酵素iNOSの誘導(後半)と一致しているのに加えて、NF-κB活性を促進するスルフヒドリル化と同調して初期応答の段階で生じるコアクチベーターRPS3との相互作用の促進、およびNF-κBの標的遺伝子のプロモーターへのRPS3の結合の時間経過とも一致していた。質量分析と変異解析によって、ニトロシル化されることが示されているのと同じ残基でスルフヒドリル化が起きること、この残基の変異がTNF-αに誘導されるNF-κBのスルフヒドリル化とRPS3との相互作用を消失させ、TNF-αに誘導される細胞死に対する細胞の感受性を高めることが確認された。このように、著者らは、スルフヒドリル化とその後のニトロシル化によるNF-κBの連続的な翻訳後修飾が転写活性の初期活性化を媒介し、その後、その活性は終結すると提唱している。

N. R. Gough, First Sulfhydration, Then Nitrosylation. Sci. Signal. 5, ec26 (2012).

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2012年1月24日号

Editor's Choice

翻訳後修飾
まずスルフヒドリル化、次にニトロシル化

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