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植物のリシンモチーフ受容体の活性化の仕組み:構造生物学からわかること
How Plant Lysin Motif Receptors Get Activated: Lessons Learned from Structural Biology
Sci. Signal., 26 June 2012
Vol. 5, Issue 230, p. pe28
[DOI: 10.1126/scisignal.2003274]
Roland Willmann* and Thorsten Nürnberger*
University of Tübingen, Center for Plant Molecular Biology (ZMBP)-Plant Biochemistry, D-72076 Tübingen, Germany.
* Corresponding authors. E-mail: roland.willmann@uni-tuebingen.de (R.W.); nuernberger@uni-tuebingen.de (T.N.)
要約:リシンモチーフ(Lysin motif:LysM)受容体キナーゼは、植物に特有のものであり、植物と微生物の相互作用において重要な機能を果たしている。これらのタンパク質は、微生物由来のN-アセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine:NAG)含有リガンドを認識するが、リガンドを感知して受容体が活性化する分子機序はまだわかっていない。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のLysM受容体キナーゼCERK1(chitin elicitor receptor kinase 1、キチン誘発物受容体キナーゼ1)の3次元構造は報告されている。CERK1は、真菌の細胞壁の主成分であるキチンから生じるNAGオリゴマーと結合し、真菌感染に対する免疫を媒介する。NAG五糖体と複合体を形成したCERK1の結晶構造からは、3個のNAG部分がCERK1の外部ドメイン中の3つのリシンモチーフのうちの1つに強固に結合していることが明らかになった。しかし、受容体の活性化と免疫シグナル伝達には、リガンドに誘導されるCERK1のホモ二量体形成が必要である。NAG八糖体が二価リガンドとして機能することによって、CERK1二量体を安定する。このことは、NAGオリゴマーの免疫原性が受容体結合に必要な断片よりも大きな断片に限定される理由を構造的に説明する。CERK1は植物LysMタンパク質のクラス全体の機能に関するパラダイムとしての役割を果たしているのかもしないので、その活性様式に関する洞察は、これらの受容体に関する将来の研究を方向づけるものである。
R. Willmann, T. Nürnberger, How Plant Lysin Motif Receptors Get Activated: Lessons Learned from Structural Biology. Sci. Signal. 5, pe28 (2012).