記事ID ： 44807

GPX4を含む重要なマーカータンパク質、5種類／10種類のターゲット検出用のセット品フェロトーシス抗体キット（Ferroptosis Antibody Kit）

メーカー名：Proteintech Group, Inc.

フェロトーシス抗体キット（Ferroptosis Essentials/Expanded Antibody Kit）は、フェロトーシス細胞死経路で重要な役割を果たす因子やマーカータンパク質を検出する抗体が含まれるサンプラーキット（トライアル抗体パック）です。

抗体トライアルサイズ5種類が含まれる「エッセンシャル（Essentials）」または10種類が含まれる「エクスパンド（Expanded）」を選択できます。

フェロトーシスとは?
構成内容
使用例

背景

■ フェロトーシスとは?

フェロトーシス（Ferroptosis）は、細胞内の活性酸素種（ROS：reactive oxygen species）レベルの増加を特徴とする、鉄依存の制御された細胞死です。フェロトーシスの主な形態的特徴は、ミトコンドリアのクリステの減少や消失を伴うミトコンドリア体積の減少で、この現象は他の細胞死経路では通常認められません。

■ フェロトーシス関連分子は?

GPX4（Glutathione peroxidase 4、グルタチオンペルオキシダーゼ4）は、グルタチオン依存的に活性を示す抗酸化酵素であり、フェロトーシス経路の重要な制御因子として機能します。GPX4は、還元型グルタチオン（GSH：Glutathione-SH）を補因子として利用し、細胞内の過酸化脂質（lipid peroxide）を還元します。細胞内の還元型グルタチオン（GSH）の枯渇が原因となり、GPX4が不活性な状態になると、活性酸素種（ROS）の蓄積が生じ、フェロトーシスが誘発されます。フェロトーシスは他にも、アミノ酸トランスポーターであるSLC7A11（xCT）とSLC3A2（CD98）で構成される、グルタミン酸代謝経路に関連するSystem x_c^-（シスチン／グルタミン酸交換輸送体、x_c^-系）による調節を受けます。System x_c^-が阻害されると、細胞内へ取り込まれるシスチン／システインが減少することによって還元型グルタチオン（GSH）の生合成が妨げられます。その結果、GPX4活性の還元作用が機能不全に陥り、酸化ストレスが亢進することで、フェロトーシスが誘発されます。また近年、GPX4非依存性のFSP1-CoQ10経路等のいくつかの経路がフェロトーシスの調節に関与することが報告されています。

トランスフェリン受容体は、細胞内への鉄イオンの取り込みを調節する受容体タンパク質であり、フェロトーシスに極めて重要な役割を果たします。細胞内に取り組まれた過剰な鉄イオンは、フェントン反応（Fe²⁺+H₂O₂→Fe³⁺+OH^-+・OH）を介したヒドロキシルラジカル（・OH）の生成に寄与し、それに伴う脂質の過酸化によってフェロトーシス性の細胞死を誘導します。DMT1（Divalent metal transporter 1、二価金属トランスポーター1、SLC11A2）は、鉄恒常性の調節に重要な役割を果たすトランスポーターであり、フェロトーシスの制御に関与します。また、酸化ストレスに対する生体防御機構において重要な役割を担うKEAP1-NRF2経路は、複数の疾患モデルにおいてフェロトーシスに対して保護的な役割を果たすことが示されています。一方、酸化ストレスにより誘導されるNRF2の標的遺伝子であるHO-1（Heme oxygenase-1、ヘムオキシゲナーゼ1）は、細胞内の鉄レベルや活性酸素種（ROS）レベルに応じて、フェロトーシスに対して促進的に働く場合と抑制的に働く場合があります。

脂肪酸代謝を媒介する酵素であるACSL4（acyl-CoA synthetase long chain family member 4、アシルCoA合成酵素長鎖ファミリーメンバー4、長鎖アシルCoA合成酵素4）は、特定条件下においてフェロトーシスの促進因子／ドライバーおよびバイオマーカーとして機能する可能性が示唆されています。DHODH（dihydroorotate dehydrogenase、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ）は、フェロトーシスに対して抑制的に働く調節因子です。DHODH阻害剤によって、がん細胞におけるフェロトーシス感受性を増加させ、腫瘍抑制作用を誘導する研究が行われており、潜在的な治療標的として研究されています。

［参考ブログ記事］非アポトーシス性細胞死
［参考ブログ記事］オートファジー・細胞死
［参考ブログ記事］ヒト疾患におけるフェロトーシスの役割

特長

フェロトーシス経路で重要なターゲットを厳選
プロテインテックで検証済み／豊富な引用実績の一次抗体
「エッセンシャル（5種類）」と「エクスパンド（10種類）」から選択可能
ウェスタンブロット（WB）や免疫組織化学（IHC）染色を含む複数のアプリケーション適用
キットに含まれる一次抗体は単品購入も可能

構成内容

■ フェロトーシス抗体キットの構成内容（※）
ターゲット	エッセンシャル（5種類）（品番：PK30002 ）	エクスパンド（10種類）（品番：PK30003 ）	構成品（単品品番）	包装
GPX4	●	●	67763-1-Ig	20 UL
SLC7A11/xCT	●	●	26864-1-AP	20 UL
KEAP1	●	●	80744-1-RR	20 UL
NRF2	●	●	80593-1-RR	20 UL
ACSL4	●	●	22401-1-AP	20 UL
FSP1	-	●	20886-1-AP	20 UL
CD98/SLC3A2	-	●	15193-1-AP	20 UL
HO-1	-	●	10701-1-AP	20 UL
DMT1/SLC11A2	-	●	20507-1-AP	20 UL
DHODH	-	●	14877-1-AP	20 UL

※ キットに含まれる個別抗体の「交差種」や「適用アプリケーション」に関しては、「エッセンシャル（品番：PK30002 外部リンク）」または「エクスパンド（品番：PK30003 ）」のプロテインテック社製品ページをご参照ください。

使用例

■ ウェスタンブロット（WB）検出

図1
Various lysates were subjected to SDS PAGE followed by western blot with 867763-1-Ig (GPX4 antibody) at dilution of 1:5000 incubated at room temperature for 1.5 hours.

図2
Non-treated and MG 132 treated HEK-293 cells were subjected to SDS PAGE followed by western blot with 80593-1-RR (NRF2/NFE2L2 antibody) at dilution of 1:2500 incubated at room temperature for 1.5 hours.

■ 免疫組織化学（IHC）染色

図3
Immunohistochemical analysis of paraffin-embedded human liver cancer tissue slide using 67763-1-Ig (GPX4 antibody) at dilution of 1:2000 (under 40x lens). Heat mediated antigen retrieval with Tris-EDTA buffer (pH 9.0).

図4
Immunohistochemical analysis of paraffin-embedded human renal cell carcinoma tissue slide using 26864-1-AP (SLC7A11/xCT antibody) at dilution of 1:200 (under 40x lens). Heat mediated antigen retrieval with Tris-EDTA buffer (pH 9.0).

■ 免疫蛍光染色（IF）解析

図5
Immunofluorescent analysis of (4% PFA) fixed HeLa cells using GPX4 antibody (67763-1-Ig, Clone: 3F5G5) at dilution of 1:800 and CoraLite®488-Conjugated AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG(H+L).

図6
Immunofluorescent analysis of (-20°C Ethanol) fixed MG132 treated HepG2 cells using NRF2/NFE2L2 antibody (80593-1-RR, Clone: 1I21) at dilution of 1:600 and CoraLite®488-Conjugated AffiniPure Goat Anti-Rabbit IgG(H+L), CL594-Phalloidin (red).