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Cytodiagnostics社 金ナノ粒子・金コロイドの基礎と応用

記事ID : 14549
研究用

カルボキシル基修飾金ナノ粒子へのタンパク質コンジュゲート方法

7. 金ナノ粒子へのタンパク質標識法 ‐ 共有結合


金ナノ粒子コンジュゲート は、生物学的分野やバイオセンシング用途に幅広く応用されています。例えば、光学顕微鏡や電子顕微鏡、ラテラルフロー 法、ドットブロットのような イムノブロット でプローブとして用いられます。

金ナノ粒子コンジュゲートを調整する方法には、受動吸着による方法と、架橋剤を介した共有結合による方法の二種類があります。受動吸着は比較的簡便な調整方法で実施可能ですが、標識分子は時間の経過と共に脱離する可能性があるため、永久的なコーティングには適しません。加えて、表面への吸着後、標識したタンパク質の三次構造の変化や活性部位または抗原部位の金粒子表面への結合によって、標識タンパク質の活性が失われる場合があります。

受動吸着法はこのような欠点があるものの、簡便に金ナノ粒子コンジュゲートを調製できるため、一般的な手法として定着しています。受動吸着 による標準的な球状金ナノ粒子のタンパク質コンジュゲートの調製には、「金ナノ粒子コンジュゲート調製の最適化キット」が最適です。

受動吸着法と比較して、共有結合による標識法は、目的分子を官能化金ナノ粒子(例えば、カルボキシル基またはアミン基を有する)へ永続的に固定化することができます。したがって、受動吸着法よりも安定的なタンパク質標識が可能です。共有結合に標識は、特定の官能基と反応する架橋剤(例:EDC/NHS試薬)を使用します。この反応は、受動吸収法よりも特異的で制御しやすく、共有結合するリガンド数は特定のアプリケーションに最適化できます。また、共有結合プロセスによるタンパク質の三次元構造に与える影響は最小限で、標識するタンパク質の特性および活性が維持されます。

全てのカルボキシル基修飾金ナノ粒子金ナノアーチン金ナノロッド製品は、結合のためにEDC/NHS反応を利用します。EDC/NHSは粒子表面のカルボキシル基を「活性化」し、中間体を形成させます。中間体は、その後標識する特定のタンパク質やリガンド中に存在する一級アミンと反応します。EDC標識の効率は一般的に低く pH に敏感で、一定の性能と安定性を得るためには、共有結合プロトコルの最適化が必要になります。以下のプロトコルでは、一例としてCytodiagnostics 社カルボキシル基修飾金ナノ粒子への体生体分子結合の一般的なガイドラインを紹介します(一例として、20nmのカルボキシル基修飾金ナノ粒子への標準のIgGの結合を記載します)。他の種類の生体分子やナノ粒子では、最適な標識条件が異なる場合があります。粒子表面への最大の結合効率を得るためには、完全に標識するのに必要な理論上のタンパク質量に対して、約1〜10倍過剰に必要です。

材料および必要な機器

  • 20nm カルボキシル基修飾金ナノ粒子
  • メチル基修飾金ナノ粒子 (ネガティブコントロール)
  • 1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride (EDC) (Sigma, Cat# E1769)
  • N-hydroxysulfosuccinimide (Sulfo-NHS) (Sigma, Cat# 56485)
  • ポジティブコントロールタンパク質: ペルオキシダーゼ (HRP) または IgG from human serum (Sigma, Cat# I4506)
  • ブロッキング剤: ウシ血清アルブミン (BSA) (Sigma, Cat# A3059)
  • 活性化バッファー: 2-(N-morpholino)ethanesulfonic acid (MES) buffer (10 mM, pH 5.5)
  • カップリングバッファー: 1X リン酸緩衝バッファー (PBS)
  • 洗浄バッファー: 1X Phosphate Buffered Saline+ 0.05% Tween 20 (PBST)
  • UV-VIS Spectrophotometer
  • 標識タンパク質(Protein of interest to be conjugated)

Note:効率的な結合には、タンパク質の精製度も関係します。第一級アミンを含む他の分子の混入(例.BSAなど)は、EDCと標的タンパク質の反応を競合阻害し、結合効率を低下させます。また、標識タンパク質は、十分な数の第一級アミンを有する必要があり、例えばリシン残基はEDCの主要な標的部位です。

 

金ナノ粒子へのIgG標識プロトコール

  1. 金ナノ粒子の濃度がOD50 以下の場合は、遠心で濃縮してください。また、粒子がバッファー中にある場合は、純水中で遠心分離によって洗浄します。手順については、「金ナノ粒子:保管と取り扱い」を参照してください。
  2. MESバッファー中で新鮮なEDC/NHS混合溶液を30 mg/mL および 36 mg/mLの濃度でそれぞれ調製します。
    *EDC/NHSは、水溶液中では急速に加水分解するため、標識操作の直前に新たに調製してください。 
  3. 20 nm金ナノ粒子(OD 50 in water)と、ステップ2で調製したEDC/NHS溶液10μLとを混合します。
  4. 室温で30分間インキュベートします。
  5. 1 mLのPBSTを加えて、ボルテックスします。
  6. 6,500 g 30分間の遠心で、スピンダウンします。
  7. 上清を取り除きます。
  8. IgG(1 mg/mL in 1X PBS)10 µL を加えます。*
  9. 10秒間、ウォーターバスソニケーターで超音波処理します。
  10. 混合しながら室温で2〜4時間インキュベートします。
  11. 1 mLのPBSTを加えて、ボルテックスします。
  12. 3,500 g 30分間の遠心で、スピンダウンします。
  13. 上清を取り除きます。
  14. 1% BSAを含むPBS 50 μLを添加します。
  15. 4℃で保存してください(ready to use)。

*タンパク質の濃度は、粒子サイズおよび結合させるタンパク質によって異なります。一般的に、タンパク質量は、完全に粒子表面をコートするのに必要な量に対して、10倍過剰量を用意します。タンパク質の最適量を算出するためには、粒子の全表面積とドッキング領域を推定します。次の表は、異なるサイズのカルボキシル基修飾金ナノ粒子にIgGを結合させるための一般的なリファレンスです。

 

表1.EDC結合におけるカルボキシル基修飾金ナノ粒子に対するIgG推奨容量。
粒子の表面積は、Cytodiagnostics社の金ナノ粒子の性能評価にしたがって計算されます。150kDaの分子量を持つ IgGのドッキング領域は、 45 nm2と推定されます。「N X full coverage amount」は、インキュベーションする量と完全に粒子表面をコートするのに必要な量の間の過剰比(excess ratio)を示します。
EDC結合におけるカルボキシル基修飾金ナノ粒子に対するIgG推奨容量

 

コンジュゲートのバリデーション

結合結果を直接的に検証する測定方法はありません。多くの場合、UV- Visスペクトルやゲル中の移動度、動的光散乱測定における流体力学的径は信頼性の高いシフトを示さないため、Cytodiagnostics社では、HRP-TMBまたはIgG-DotBlotアッセイを用いて、結果を検証しています。

HRP-TMB アッセイ
Cytodiagnostics社では、カルボキシル基修飾金ナノ粒子標識キットでEDCの結合の検証方法としてHRP-TMB アッセイを用いています。HRP-TMB アッセイは、 EDC結合のためのポジティブコントロールとしてHRPを使用し、TMBアッセイでシグナルを検出します。簡便で迅速かつ高感度な方法です。概要として、結合した後、 TMB溶液100μL と標識粒子 5 μLを混合し、1〜2分間発色させます。HRP の結合が上手くいっている場合、溶液の色は青色に変化します。

HRP-TMB アッセイ
図1.HRP標識金ナノ粒子のTMBアッセイ。
EDC処理またはEDC未処理の金ナノ粒子について、それぞれHRPとインキュベートし、続いてTMBと共にインキュベートします。HRP標識粒子を含む溶液(右)は青色に変化し、HRP標識の成功を示します。

 

IgG Immuno-Dot Blot アッセイ
IgG Immuno-Dot Blot アッセイは、 EDC結合のポジティブコントロールとしてのIgGを使用し、ドットブロットアッセイでシグナルを検出します。本アッセイは、粒子上に標識後のIgGの機能を確認するための、より優れたコントロールになり得ます。

必要な材料
  • Goat 抗ヒト IgG(H+L) 抗体
  • 膜ロッキング溶液 (5% (w/v) dry milk)
  • 銀増感キット(for Membranes) (Cytodiagnostics Cat# SR-01-02)
  • ニトロセルロース膜 (Whatman, Cat# 10 402 594C)
  • (オプション) ミニインキュベーショントレイ (Bio-Rad, Cat#170-3902)
プロトコール
  1. Goat 抗ヒト IgG(H+L) 抗体の連続希釈系列溶液を1X PBS中で調製します(濃度:0.01, 0.05, and 0.1 µg/µL)。
  2. ニトロセルロース膜のストリップ上に希釈溶液を1μL スポットし、15分間風乾します。
  3. 膜ストリップをミニインキュベーショントレイまたは一般的なガラス/プラスチック2 mLバイアルに移します。
  4. 膜ブロッキング溶液1 mLを加えます。(溶液は膜全体をカバーするように加えてください。)
  5. トレイまたはガラスバイアルをブロッキングプレートに移し、室温で30分間インキュベートします。
  6. OD 0.5の最終濃度に達するように、ヒトIgGコンジュゲートの粒子の計算された量を加える。
  7. さらに2時間、室温ででインキュベートします。
  8. 溶液を取り除きます。
  9. 0.05% Tween 20を含む 1 mLの水で、膜を洗浄します。
  10. 洗浄を二回繰り返します。
  11. 銀増感試薬1 mLを加えます。(キットのマニュアルにしたがい、使用前新鮮な溶液を調製してください。)
  12. 15分間デベロップし、色の変化を観察します。
Goat 抗ヒト IgG 抗体とヒトIgG標識金ナノ粒子を用いたドットブロットアッセイ
図2.Goat 抗ヒト IgG 抗体とヒトIgG標識金ナノ粒子を用いたドットブロットアッセイ。
EDC処理またはEDC未処理の金ナノ粒子について、それぞれヒトIgGとインキュベートします。EDC処理した場合のみ(下段)、濃度依存的な陽性シグナルを得ることが出来ます。

 

よくある質問 Q&A

【01】 結合のための最適なコンジュゲーション pH を教えてください。

EDC/NHS を用いたカルボキシル化金ナノ粒子の活性化は、一般に、弱酸性条件下で行われる一方、最適な結合反応はpHが7〜8付近で実施されます。

【02】 結合反応時間(conjugation time)について教えてください。

Cytodiagnostics社の標準的プロトコールでは、室温で2〜4時間の条件でタンパク質を結合させます。タンパク質の安定性に基づいて、反応時間を調整してください。EDCの結合効率は通常低いため、2時間のインキュベーションは多くのプロトコルで見られますが、アプリケーションやタンパク質濃度次第では2時間以下の反応時間でも十分な場合があります。結合時間と最終的に得られる結果について異なる標識タンパク質や分子で検証する場合、カイネティックな研究が必要です。例えば、カルボキシル基修飾金ナノ粒子にヒトIgGを異なる反応時間(1時間、2時間、3時間および一晩)で結合させます。ドットブロットアッセイで検証したところ、最適な結合反応時間は2時間でした。

ドットブロットアッセイにおける結合反応時間の影響
図3.ドットブロットアッセイにおける結合反応時間の影響。
金ナノ粒子とヒトIgGを異なる時間(1時間、2時間、3時間および一晩)でインキュベートした。結合反応時間が2時間の場合に、最良のドットブロットシグナルを得た。

 

【03】 1ステップの結合反応のメリットとデメリットは何ですか?

1ステップの結合反応の利点は、簡便な手順です。しかし、1ステップでの結合反応は、タンパク質と粒子の結合だけではなく、タンパク質同士も架橋するリスクがあります。このリスクは、結合させるタンパク質の構造に依存します。つまり、タンパク質と粒子の間での利用可能なカルボキシル基の比によって決定されます。また、 余剰のEDC/NHSは、タンパク質同士の架橋の可能性を増加させます。タンパク質同士の架橋を最小にし、最大の結合/パフォーマンスの条件の検討には、タンパク質とEDC/NHS濃度の滴定実験を行うことが推奨されます。

【04】 結合結果に影響する他の要因はありますか?

結合反応の pH および結合時間が適当であるにも関わらずポジティブな結果を得られない場合、結合前に新鮮なEDC/NHS試薬を調製しているか確認ください。また、EDCは常に-20℃で保存してください。また、タンパク質を架橋するのを防ぐには、活性化後の余剰 EDC/NHSを効果的に取り除くことが重要です。

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