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Akt経路およびRas経路に対するPD-1の選択的作用が、細胞周期の分子成分を調節し、T細胞の増殖を抑制する
Selective Effects of PD-1 on Akt and Ras Pathways Regulate Molecular Components of the Cell Cycle and Inhibit T Cell Proliferation
Sci. Signal., 26 June 2012
Vol. 5, Issue 230, p. ra46
[DOI: 10.1126/scisignal.2002796]
Nikolaos Patsoukis1*, Julia Brown1*, Victoria Petkova1, Fang Liu2, Lequn Li1, and Vassiliki A. Boussiotis1†
1 Department of Hematology-Oncology and Cancer Biology, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
2 Center for Advanced Biotechnology and Medicine and Susan Lehman Cullman Laboratory for Cancer Research, Ernest Mario School of Pharmacy, Rutgers, State University of New Jersey, Piscataway, NJ 08854, USA.
* These authors contributed equally to this work.
† To whom correspondence should be addressed. E-mail: vboussio@bidmc.harvard.edu
要約:受容体であるプログラム細胞死1(PD-1)はT細胞の増殖を抑制し、自己反応性T細胞の抑制において重要な役割を果たし、さらに抗ウイルス応答と抗腫瘍応答を弱める。PD-1によるシグナル伝達がT細胞の増殖をどのように抑制するのかを明らかにするために、われわれはヒトCD4+T細胞を用いて、細胞周期の分子制御に対するPD-1シグナル伝達の影響について検討した。ユビキチンリガーゼSCFSkp2は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の阻害因子であるp27kip1を分解する。PD-1は、このSCFSkp2の構成成分をコードするSKP2の転写を抑制することによって、G1期を通る細胞周期の進行を遮断した。つまり、PD-1を介して刺激されたT細胞では、Cdkは活性化されず、Cdkの2つの重要な基質はリン酸化を受けなかった。PD-1の活性化は、E2F標的遺伝子の発現を抑制する網膜芽細胞腫遺伝子産物のリン酸化を抑制した。またPD-1は、その活性を亢進させる転写因子Smad3のリン酸化を抑制した。これらの出来事は、G1期阻害因子p15INK4の量を増やし、Cdk活性化ホスファターゼであるCdc25Aを抑制することによって、細胞周期の付加的な抑制性チェックポイントを誘導した。PD-1は、ホスホイノシチド3-キナーゼ-Aktシグナル伝達、およびRas-マイトジェン活性化-細胞外シグナル制御キナーゼキナーゼ(MEK)-細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)シグナル伝達を抑制することによって、SKP2の転写を抑制した。増殖促進性サイトカインであるインターロイキン2に細胞を曝露すると、MEK-ERKシグナル伝達の活性化が回復したが、Aktシグナル伝達は回復せず、SKP2の発現が部分的に回復したのみであった。以上のように、PD-1は、細胞周期の複数の調節因子に作用することによって、細胞周期の進行とTリンパ球の増殖を遮断する。
N. Patsoukis, J. Brown, V. Petkova, F. Liu, L. Li, V. A. Boussiotis, Selective Effects of PD-1 on Akt and Ras Pathways Regulate Molecular Components of the Cell Cycle and Inhibit T Cell Proliferation. Sci. Signal. 5, ra46 (2012).