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社会的孤立の性依存的なシグナル伝達

Sex-dependent signaling of social isolation

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
19 Jul 2022 Vol 15, Issue 743
DOI: 10.1126/scisignal.add9512

LESLIE K. FERRARELLI

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

Z.-J. Wang, T. Shwani, J. Liu, P. Zhong, F. Yang, K. Schatz, F. Zhang, A. Pralle, Z. Yan, Molecular and cellular mechanisms for differential effects of chronic social isolation stress in males and females. Mol. Psychiatry 27, 3056-3068 (2022).

社会的孤立ストレスの神経学的影響は男女間で異なっている。

COVID-19のパンデミックは世界中の人々を突然,長期的な社会的孤立におとしいれた。そして現在、その心理的影響が認識され始めている。幼少期に感じた社会的孤立ストレスは、成人期、特に脳内ネットワークが成熟する重要な期間である思春期にも、悪影響を及ぼす可能性がある。Wangらは、若齢マウスにおける社会的孤立ストレスの影響は、神経回路とシグナル伝達から動物の行動に至るまで、性別に依存した形で別々に表れることを明らかにした。雄マウスを5週間社会的に孤立させると、前頭前野皮質(PFC)のニューロン活動の低下、扁桃体外側基底核(BLA、脳の重要な感情調節の中枢)の活動亢進、BLA内の転写因子CREBおよび標的遺伝子の活性化、および攻撃性の増強が生じた。雄マウスでは、社会的ストレス負荷期間の後にCREB阻害剤を局所注射すると、攻撃行動が減弱した。一方、雌マウスでは、同様に孤立させることで、PFCおよび腹側被蓋野(VTA、社会的行動調節の中枢)のニューロン活動の低下、神経ペプチド・オレキシンの産生低下、および社会的引きこもり行動が生じた。オレキシンは、動機づけ行動の誘導に関連する摂餌行動および覚醒状態の制御に寄与している。ストレスを負荷した雌マウスにオレキシン-Aを投与すると、社会性行動が回復した。これらの知見は、社会的孤立ストレスの神経学的影響を回復させるための標的となる可能性がある、性依存性のメカニズムを明らかにするものである。このような戦略は、青少年のメンタルヘルスにきわめて重要と考えられる。

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2022年7月19日号

Editor's Choice

社会的孤立の性依存的なシグナル伝達

Research Article

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