代謝
脂質の局在化

Metabolism
Localizing Lipids

Editor's Choice

Sci. Signal., 13 April 2010
Vol. 3, Issue 117, p. ec108
[DOI: 10.1126/scisignal.3117ec108]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

血管内皮増殖因子(VEGF)は、血管形成における役割で知られているが、VEGF-Bはほとんどの組織において血管形成にはあまり関与しておらず、その生物学的機能ははっきりしていない。Hagbergらは、バイオインフォマティクス解析によってVegfbが ミトコンドリア遺伝子と共発現されることを予期せずに発見をした。この結果は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応を用いて確認された。VEGF-Bが脂肪酸をエ ネルギー源として利用するミトコンドリアが豊富な組織(心臓、褐色脂肪細胞、酸化的な骨格筋)に多く存在することを考慮して、著者らは、VEGF-Bが内 皮細胞の脂肪酸処理に与える影響について探索した。VEGF-Bは、培養内皮細胞および内皮細胞株において、脂肪酸輸送タンパク質(FATP)および FATPをコードするmRNAの存在量を増大させ、この作用はVEGF受容体1(VEGFR1)およびニューロピリン1(NRP1)に対する抗体によって 遮断された。様々なノックアウトマウスやVEGFをコードするアデノウイルスを注入したマウスのin vivoでの解析と、野生型およびVegfb-/-マ ウスに由来する単離内皮細胞の解析と組み合わせたところ、VEGF-BがVEGFR1およびNRP1を介してシグナルを送り、末梢の脂質代謝組織における FATP3とFATP4の内皮存在量を増大させることが示された。FATP3またはFATP4の過剰発現によって、VEGF-Bによる処理と同様に、培養 内皮細胞における標識長鎖脂肪酸(LCFA)の取込みが増加したのに対して、FATP3およびFATP4のノックダウンによって、VEGF-BがLCFA の蓄積を促進する能力が低減した。VEGF-Bはまた、2つの液体コンパートメントを分けている内皮の単層を通過するLCFAの輸送を刺激した。Vegfb-/-マ ウスでは、LCFAの腸での吸収は正常であったが、脂質処理は野生型マウスとは異なり、心臓、褐色脂肪組織、筋肉の脂質蓄積は少なく、白色脂肪組織への蓄 積は多かった。したがって、著者らは、VEGF-Bは、FATPの産生を刺激することで、内皮の脂肪酸輸送、そしてそれにより脂質処理を制御すると結論付 ける。また著者らは、この役割が確認されたことによって、脂質の異常蓄積に関連する疾患の新たな治療選択肢につながるかもしれないと考える。

C. E. Hagberg, A. Falkevall, X. Wang, E. Larsson, J. Huusko, I. Nilsson, L. A. van Meeteren, E. Samen, L. Lu, M. Vanwildemeersch, J. Klar, G. Genove, K. Pietras, S. Stone-Elander, L. Claesson-Welsh, S. Yla-Herttuala, P. Lindahl, U. Eriksson, Vascular endothelial growth factor B controls endothelial fatty acid uptake. Nature 464, 917-921 (2010). [PubMed]

E. M. Adler, Localizing Lipids. Sci. Signal. 3, ec108 (2010).

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