- ホーム
- BRAFの脊髄感覚シナプスへの動員は経シナプス的なNMDA受容体活性を増強することによって神経障害性疼痛を促進する
BRAFの脊髄感覚シナプスへの動員は経シナプス的なNMDA受容体活性を増強することによって神経障害性疼痛を促進する
BRAF recruitment to spinal sensory synapses promotes neuropathic pain by potentiating transsynaptic NMDA receptor activity

SCIENCE SIGNALING
25 Aug 2026 Vol 19, Issue 952
DOI: 10.1126/scisignal.aeh6852
Daozhong Jin, Hong Chen, Yuying Huang, Shao-Rui Chen*, Hui-Lin Pan*
- Center for Neuroscience and Pain Research, Department of Anesthesiology and Perioperative Medicine, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77030, USA.
- * Corresponding author. Email: schen@mdanderson.org (S.-R.C.); huilinpan@mdanderson.org (H.-L.P.)
Editor’s summary
脊髄におけるNMDARと呼ばれるグルタミン酸受容体の活性亢進は、慢性神経障害性疼痛を引き起こす。Jinらは、神経損傷後のこの現象が、脊髄感覚シナプスでキナーゼのBRAFによって媒介されることを見出した。げっ歯類における神経損傷後の慢性神経障害性疼痛の強度および持続時間は、脊髄ニューロンにおけるBRAFの感覚神経細胞体から中枢末端への移行によって規定され、脊髄ニューロンでは、BRAFにより活性化されたシグナル伝達が、シナプス前およびシナプス後NMDARの活性化と存在量を増加させた。がん治療薬として承認されているBRAF阻害剤が、損傷を受けた動物の熱刺激および触覚刺激に対する過敏性を軽減したことから、BRAF阻害剤は神経障害性疼痛の緩和に転用できる可能性があることが示唆された。—Leslie K. Ferrarelli
要約
脊髄後角におけるシナプス性NMDA受容体(NMDAR)の持続的な活動亢進は、慢性神経障害性疼痛の顕著な特徴である。今回われわれは、キナーゼのBRAFが、この過程の重要な制御因子であることを明らかにした。ラットにおいて、脊髄神経損傷は、BRAFの後根神経節(DRG)から脊髄シナプトソームへの移行を誘導し、下流のキナーゼであるMEKおよびERKのリン酸化の増強を伴った。さらに、脊髄損傷は、ラットおよびヒトの脊髄試料におけるNMDARとBRAF/MEK/ERKの相互作用を増加させた。マウスDRGニューロンにおけるBRAFの薬理学的阻害または遺伝的除去により、脊髄後角において、神経損傷によって誘発されるNMDARリン酸化、シナプス輸送、シナプス前およびシナプス後活動亢進が解消した。さらに、野生型マウスでは神経損傷後に痛覚過敏性が持続した一方、DRGニューロンのBRAFを欠損したマウスまたはBRAF経路阻害剤を投与したマウスでは、痛覚過敏性は一過性で重症度が低かった。逆に、DRGニューロンにおいて恒常的活性型BRAF変異体を発現させると、持続的な痛覚過敏性が誘発され、これは、NMDARアンタゴニストのガバペンチンまたはα2δ-1 C末端干渉ペプチドによって阻害された。この痛覚過敏性は、脊髄におけるNMDARリン酸化の増加とシナプス前およびシナプス後活性の増強を伴った。これらの結果は、感覚ニューロンのBRAFが、NMDARのリン酸化および経シナプス的な活動亢進を増強することによって、神経障害性疼痛を促進することを明らかにするものであり、BRAF阻害剤が神経障害性疼痛の治療に転用できる可能性があることを示唆している。
2026年8月25日号






