SARS-CoV-2 スパイクタンパク質(S-RBD protein)とは?
コロナウィルスのスパイク糖タンパク質(Spike glycoprotein、S glycoprotein、Sタンパク質、S-protein RBD(Receptor-binding domain)、スパイク(S)タンパク質)は、新たな疾患である「COVID-19」の診断と治療の両面において、有望な標的として研究されています。スパイクタンパク質は、全てのヒトコロナウイルスで「コロナ」(ラテン語で冠の意味、英語 crown)を出現させる、I型糖タンパク質です。これは、ウイルスと宿主細胞との相互作用において、特に重要な役割を果たします。スパイクタンパク質は、特異的な細胞受容体に結合して、ウイルスと細胞の融合を可能にするコンホメーション変化を起こします。これまでの研究により、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD:Receptor-binding domain、S-protein RBD)は、ACE2(Angiotensin-converting enzyme 2、アンジオテンシン変換酵素II)と強く相互作用することが示されています。スパイクタンパク質のRBD(S-RBD protein)は、抗体のエピトープとなり得ます。スパイクタンパク質(S-RBD protein)は、配列保存性と免疫原性が高いため、コロナウイルスの診断ツールとして、スパイクタンパク質(S-RBD protein)を選択して応用する研究が進められています。COVID-19抗体は、SARS-CoV-2への曝露後に宿主免疫系によって産生され得ます。IgGおよびIgM抗体は、それぞれ免疫グロブリンG(イムノグロブリンG)および免疫グロブリンM(イムノグロブリンM)としても知られており、脊椎動物の免疫系によって産生される抗体アイソタイプの1つです。本ELISAキットは、SARS-CoV-2の「スパイクタンパク質(S-RBD protein)」でコートされたELISAプレートを含みます。血清試料中のCOVID-19 スパイクタンパク質(S-RBD protein)に対するIgG/IgM抗体は、コートされたスパイクタンパク質(S-RBD protein)に結合します。
■ 測定原理
本製品(品番:KE30003)は、ヒト血清および血漿中のヒト Anti-SARS-CoV-2 S-RBD protein IgG 抗体(ヒトコロナウイルススパイクタンパク質に対するヒトIgG抗体)を検出および測定するためのELISAキットです。間接ELISA法を測定原理として利用しています。96ウェルプレートには、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質(S-RBD protein)の組換えタンパク質(リコンビナントタンパク質)がコートされており、ヒト血清/血漿サンプルまたはスタンダード(標準液)をウェルに添加し、インキュベーションします。ウェルを洗浄後、HRP(ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ)で標識された抗ヒトIgG抗体を各ウェルに加えて『[SARS-CoV-2 スパイクタンパク質(S-RBD protein)の組換えタンパク質]-[ヒト Anti-SARS-CoV-2 S-RBD protein IgG抗体]-[HRP標識抗ヒトIgG抗体]』複合体を形成させます。さらにウェルを洗浄後、TMB(テトラメチルベンジジン)試薬を加えて発色させます。硫酸を含む反応停止溶液を加えて発色を停止し、補正波長である630nm、および450nmのシグナルを測定します。SARS-CoV-2 スパイクタンパク質(S-RBD protein)の組換えタンパク質に結合したヒト Anti-SARS-CoV-2 S-RBD protein IgG 抗体量に比例した色の強度を得ることができます。
図1 ヒト Anti-SARS-CoV-2 S-RBD protein IgG 抗体測定ELISAキット(品番:KE30003)の原理