■ COVID-19とは?
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19:Coronavirus disease 2019)は、重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe acute respiratory syndrome)コロナウイルス2 (SARS-CoV-2)に起因する感染症です。コロナウイルスという名前は、その光輪のような外観を指し、顕微鏡で見るとウイルス粒子の周囲に「太陽コロナ(光冠)」に視覚的に似た形態を確認できます[PMCID: PMC7086490 ]。
■ SARS-CoV-2 の構造とは?
SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス2)は、以下の4つの構造成分によって構成されます。
図1. SARS-COV-2(SARSコロナウイルス2)の構造
- Nタンパク質(N-protein:ヌクレオカプシド(N)タンパク質)
- Mタンパク質(M-protein:膜(M)糖タンパク質)
- Sタンパク質(S-protein:スパイク(S)タンパク質)
- Eタンパク質(E-protein:エンベロープ(E)タンパク質)
コロナウイルスの4つの構造成分の中で、特に『Nタンパク質(N-protein:ヌクレオカプシド(N)タンパク質)』と『Sタンパク質(S-protein:スパイク(S)タンパク質)』を標的に、血清学的な診断マーカーの応用および開発研究が進められています。Nタンパク質は、コロナウイルスで最も豊富なタンパク質であり、配列保存性と免疫原性が高い構成成分です。Sタンパク質は、コロナウイルスに対する中和抗体の産生で免疫学的に重要な受容体結合ドメイン(RBD:Receptor-binding domain)を含みます。
■ SARS-CoV-2 の感染機序(メカニズム)とは?
コロナウイルスを構成するSタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD:Receptor-binding domain)は、ヒト細胞表面のACE2(Angiotensin-converting enzyme 2、アンジオテンシン変換酵素-2)に結合して、ウイルス侵入を開始します。
■ SARS-CoV-2 の血清学的研究について
SARS-CoV-2(コロナウイルス)感染の検出方法には、『コロナウイルスRNA検出法』(PCR法、RT-PCR法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法)と『コロナウイルスに対する抗体検出法』(ELISA法やラテラルフローイムノアッセイ法)の2種類が主に使用されます。
コロナウイルスRNAを逆転写して検出するPCR法(RT-PCR法)は、最も一般的なコロナウイルス感染の検出方法であり、発症1日目からコロナウイルス感染を直接的に検出することができます[PMID:32374370 ]。
コロナウイルス抗体を検出するELISA法やラテラルフローイムノアッセイ法は、コロナウイルス感染に対する宿主の免疫応答(抗体の産生)を血清学的に評価し、間接的にコロナウイルス感染を検出できると共に、ワクチン接種後のウイルス抗原に対する抗体価の検証にも利用できます[PMID:33391281 ]。この血清学的試験は、特定の集団内における感染の拡散程度の評価や、ワクチンの研究および開発で一般的に役立ちます[PMID:32374370 ]。最も感度が高く、最も初期の血清学的マーカーは総抗体(IgM+IgG)の検出です。総抗体、IgM、IgGのセロコンバージョン(抗体陽性化)時間は連続しており、発症からセロコンバージョン日の中央値はそれぞれ11日、12日、および14日であったことが報告されています[PMID:32221519 ]。
■ SARS-CoV-2 ELISAキットについて
新型コロナウイルスを解析し、COVID-19の拡散を抑制するためには、様々な試薬が必要とされます。その中で、コロナウイルス抗体やコロナウイルス抗原、その他関連するサイトカイン等を定性的および定量的に検出するために使用される『ELISA(酵素結合性免疫吸着検定法)キット』は、重要なコロナウイルス研究用ツールの1つです。