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新たなつながり:ユーイング肉腫の「ドライバー」がそのアキレス腱である

New connections: Ewing’s sarcoma’s driver is its Achilles’ heel

Editor's Choice

Sci. Signal. 24 Apr 2018:
Vol. 11, Issue 527, eaat9379
DOI: 10.1126/scisignal.aat9379

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Gorthi, J. C. Romero, E. Loranc, L. Cao, L. A. Lawrence, E. Goodale, A. B. Iniguez, X. Bernard, V. P. Masamsetti, S.Roston, E. R. Lawlor, J. A. Toretsky, K. Stegmaier, S. L. Lessnick, Y. Chen, A. J. R. Bishop, EWS-FLI1 increases transcription to cause R-loops and block BRCA1 repair in Ewing sarcoma. Nature 555, 387-391 (2018).
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数本の研究から、EWS-FLI1融合タンパク質を標的または利用してユーイング肉腫細胞を死滅させる薬物の併用が特定されている

要約

ユーイング肉腫は骨とその周囲軟部組織(軟骨や神経など)から生じるがんで、小児および青年に発生することが最も多い。ユーイング肉腫はしばしば、転写因子EWSと、mRNAスプライシングタンパク質であるFLI1との間のキメラ融合(EWS-FLI1の形成)により引き起こされる。化学療法がその標準治療であるが、毒性のために用量が制限され、それにより有効性も制限される。より有効かつ選択的にユーイング肉腫細胞を標的とする方法を明らかにすることが、患者の臨床転帰の改善に不可欠である。3本の研究から、この融合タンパク質がどのようにして、腫瘍選択的で低毒性の治療のための独自の機会を提供できるかが示されている。GorthiらはEWS-FLI1が損傷誘発性の転写を変化させ、複製ストレスを亢進し、相同組換えを障害すること、それにより、ユーイング肉腫細胞に対してBRCA欠損様の脆弱性(PARP阻害薬に対する感受性など)を付与する可能性があることを発見した。実際Iniguezらは、EWS-FLI1陽性ユーイング肉腫細胞において、キナーゼCDK12の阻害薬(THZ531など)がさらにDNA損傷の修復を減弱させて、アポトーシスを誘発することを見出した。患者由来のユーイング肉腫の培養細胞およびマウスモデルでは、THZ531とPARP阻害薬の併用が相乗的に働き腫瘍細胞死をより強力に誘導したが、造血毒性は検出されなかった。
融合タンパク質が引き起こす脆弱性を利用する以外の、もう1つの効果的な戦略は、それを直接標的化することかもしれない。本誌ArchivesにおいてZöllnerらは、EWS-FLI1の化学的阻害物質である(YK-4-279)と化学療法薬のビンクリスチンの間に相乗効果があることを発見した。YK-4-279は微小管安定化タンパク質およびユビキチンリガーゼのEWS-FLI1に依存した発現を抑制し、細胞周期停止タンパク質サイクリンB1の存在量を増加させ、それによって有糸分裂の停止を促進した。ユーイング肉腫細胞は本剤単独に対しても感受性をもっていたが、細胞をビンクリスチンに曝露させたとき、本剤は選択的スプライシングを受けた抗アポトーシスBCL2ファミリータンパク質の存在量も減少させ、全体として細胞のアポトーシスを誘導した。マウスにおけるこのような併用は、単剤では影響しなかった用量でも、腫瘍増殖を阻止し、腫瘍退縮を誘導した。これらの研究は、ユーイング肉腫の病理に関するわれわれの理解を深め、患者に対する新しく、選択的かつ毒性の低い治療戦略を明らかにする可能性がある。

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2018年4月24日号

Editor's Choice

新たなつながり:ユーイング肉腫の「ドライバー」がそのアキレス腱である

Research Article

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