細胞外WNT伝達分子

Extracellular WNT conveyors

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
6 Feb 2024 Vol 17, Issue 822
[DOI: 10.1126/scisignal.ado3060]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: avanhook@aaas.org

T. de Almeida Magalhaes, J. Liu, C. Chan, K. S. Borges, J. Zhang, A. J. Kane, B. M. Wierbowski, Y. Ge, Z. Liu, P. Mannam, D. Zeve, R. Weiss, D. T. Breault, P. Huang, A. Salic, Extracellular carriers control lipid-dependent secretion, delivery, and activity of WNT morphogens. Dev. Cell 59, 244-261 (2024).

細胞外WNT結合タンパク質であるSFRPとWIF1は、WNTシグナル伝達を促進したり阻害したりする。

WNTファミリーリガンドの分泌およびFZD受容体の活性化のためには、WNTファミリーリガンドがパルミトイル化される必要があるが、これによってリガンドの拡散は制限されることになる。分泌型FZD関連タンパク質(SFRP)およびWNT阻害因子1(WIF1)は、主としてWNTリガンドを隔離するアンタゴニストとして働くことが報告されているが、複数のin vivo研究からは、これらの分子がWNTの組織への拡散を促進することでシグナル伝達を促す可能性も明らかになっている。シグナル伝達に対するこれらWNTキャリアの寄与を分析するため、de Almeida Magalhaesらは、WNTを産生またはWNTに応答するヒトあるいはマウス細胞株を用いたin vitroモデルや、精製タンパク質の生化学的アッセイに取り組んだ。その結果、WNTは、脂質化したWNTを細胞膜に誘導するシャペロンであるWLSから直接SFRPおよびWIF1に渡され、それにより、WNTはキャリアタンパク質との複合体の形で培地中に放出されることが実証された。これらのキャリアはその後、FZD共受容体として働くグリピカンの助けを借りて、WNTをその同族FZDに引き渡した。WNT3A-キャリア複合体は、リガンド非結合キャリアタンパク質も大量に存在している場合を除き、応答細胞のWNTシグナル伝達レポーターを刺激した。このことは、キャリアタンパク質が、WNTとの結合に関してFZDとの競合に勝つことができた場合にのみ、アンタゴニストとして機能することを意味していた。さらにキャリアはWNTを、NOTUM(WNTから脂質部分を除去してシグナル伝達を阻害する分泌型加水分解酵素)に移行させた。機能アッセイを行ったところ、WNT3A-SFRP1複合体は、界面活性剤に溶解したWNT3AまたはWNT3A馴化培地と比べて、ヒト腸オルガノイドの成長促進の点で有効性が高かった。これらの知見は、SFRPおよびWIF1が、WNTをFZDに移行させてWNTシグナル伝達を促進できること、または、WNTを隔離するかそれらをNOTUMに移行させることでシグナル伝達を阻害できること、そのいずれになるかは、タンパク質の相対量およびWNT-FZD結合特異性によることを実証している。ただし、このようなタンパク質-タンパク質相互作用がin vivoでどのようにWNT依存性プロセスを決定するかは、未だ明らかではない。

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細胞外WNT伝達分子

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