自然免疫
IRAK1からPINを抜く

Innate Immunity
UnPINning IRAK1

Editor's Choice

Sci. Signal., 26 July 2011
Vol. 4, Issue 183, p. ec203
[DOI: 10.1126/scisignal.4183ec203]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

ウイルス粒子がToll様受容体(TLR)7および9によって認識されると、IRAK1[インターロイキン1(IL-1)受容体関連キナーゼ1]がTLR複合体に動員され、そこでIRAK4によってリン酸化される。活性化されたIRAK1は続いてTLR複合体から解離し、転写因子IRF7を活性化させ、活性化IRF7は核に移行して、インターフェロンa(IFN-a)をコードする遺伝子の転写を仲介する。Tun-Kyiらは、IRAK1の活性化において、リン酸化されたセリンまたはスレオニン残基に続くプロリン残基のシストランス異性化を誘導する酵素である、Pin1の役割を検討した。Pin1を欠損した形質細胞様樹状細胞(pDC)では、野生型pDCと比べて、精製リガンドまたはウイルスによるTLR7またはTLR9の刺激に応答したIFNの産生が減少した。IRAK1はPin1の基質であると確認され、その相互作用には、Pin1のWWドメインと、IRAK1のSer131、Ser144、Ser173のいずれかでのリン酸化が必要であった。Pin1欠損マウス胚線維芽細胞(MEF)またはpDCにおいては、TLR7またはTLR9の連結に応答したIRAK1の活性化が減弱した。これは、IRAK1のTLR複合体との安定した会合が一因であり、Pin1の活性によってIRAK1はTLR複合体から遊離することが示唆された。Pin1欠損pDCにおいては、TLR7またはTLR9リガンドに応答したIRF7の核移行が障害された。さらに、Pin1欠損MEFではIRF7レポーター遺伝子の活性が低下し、この作用は野生型Pin1を用いた再構成によってレスキューされたが、触媒活性のない変異体またはIRAK1に結合できない変異体を用いた再構成によってはレスキューされなかった。IRAK1 S131A、S144A、S173A(Pin1の標的となるプロリン残基の前にある残基のリン酸化を無効にする変異)をさまざまな組み合わせで発現しているMEFでは、IRF7転写活性が低下し、IFN-a産生が減少していることが、水疱性口内炎ウイルスに対する抗ウイルス活性が、これらのMEFの上清では低下していることにより示された。Pin1欠損マウスは野生型マウスに比べ、TLR7またはTLR9リガンド注入に応答したIFN-aの産生が少なく、マウスサイトメガロウイルス(TLR9を活性化するウイルス)による感染を起こしやすく、抗原に応答したCD8+ T細胞の増殖が少なかった。このようにPin1は、抗ウイルス応答において、IRAK1活性化とIFN産生を促進する。

A. Tun-Kyi, G. Finn, A. Greenwood, M. Nowak, T. H. Lee, J. M. Asara, G. C. Tsokos, K. Fitzgerald, E. Israel, X. Li, M. Exley, L. K. Nicholson, K. P. Lu, Essential role for the prolyl isomerase Pin1 in Toll-like receptor signaling and type I interferon-mediated immunity. Nat. Immunol. 12, 733-741 (2011).[PubMed]

W. Wong, UnPINning IRAK1. Sci. Signal. 4, ec203 (2011).

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IRAK1からPINを抜く

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