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PKD1で肝臓を保護する
Protecting the liver with PKD1
SCIENCE SIGNALING
27 Aug 2024 Vol 17, Issue 851
[DOI: 10.1126/scisignal.ads6258]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: wwong@aaas.org
M. Zhu, Y. Wang, T. Lu, J. Guo, L. Li, M.-H. Hsieh, P. Gopal, Y. Han, N. Fujiwara, D. P. Wallace, A. S. L. Yu, X. Fang, C. Ransom, S. Verschleisser, D. Hsiehchen, Y. Hoshida, A. G. Singal, A. Yopp, T. Wang, H. Zhu, PKD1 mutant clones within cirrhotic livers inhibit steatohepatitis without promoting cancer. Cell Metab. 36, 1711-1725.e8 (2024).
PKD1を欠損した体細胞クローンの増殖は、腫瘍を引き起こすことなく脂肪性肝疾患を予防する。
慢性的な組織損傷は、経時的に肝臓における体細胞突然変異の数を増加させる。Zhuらは、ポリシスチン-1をコードするPKD1の肝臓における体細胞突然変異の影響を調べた。感染症、過剰なアルコール摂取または代謝性の原因による慢性肝疾患を有する患者から得た非悪性の肝試料では、PKD1に非サイレント突然変異が頻発していた。Pkd1の肝特異的ヘテロ接合性またはホモ接合性欠失を有するマウスでは、肝部分切除後の肝再生が増強された。さらに、これらのマウスでは、脂肪、コレステロールおよび糖分の多い西洋食を与え、非アルコール性脂肪肝炎(NASH、多くの場合インスリン抵抗性と糖尿病を伴う)を誘発したときに、脂肪肝が少なく、耐糖能が改善していた。この保護効果は、マウスにCCl4をあわせて投与し、炎症と線維化を伴うより重症型のNASHを誘発した場合にさらに顕著であった。肝細胞の5%以上にホモ接合性またはヘテロ接合性のPkd1欠失を有するマウスにおいて、西洋食とCCl4を与えたときの脂肪肝の減少および肝細胞増殖の増加が認められたことから、小さな変異Pkd1クローンが、肝臓全体の欠失と同程度の保護効果を及ぼした可能性が示唆された。変異Pkd1を有する肝臓では、西洋食とCCl4投与の併用により、増殖促進キナーゼであるmTORの活性化が誘導され、脂肪合成の主要な転写因子である下流標的のSREBP-1cは刺激されなかった。マウスのPkd1欠失は、変異原、がん遺伝子活性化または腫瘍抑制因子不活性化により誘発される肝細胞がん(HCC)の発生に影響を及ぼさなかったことから、Pkd1変異クローンの増殖はHCCを促進(または抑制)しないことが示された。したがって、慢性肝疾患はPKD1を部分的に欠損した体細胞クローンを誘導し、これらの体細胞クローンの増殖は、腫瘍を引き起こすことなく、脂肪性肝疾患の発生を防止する。