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ケモカインを介したBリンパ球中のF-アクチンの動態、極性および遊走はWNK1シグナル伝達に依存している

Chemokine-mediated F-actin dynamics, polarity, and migration in B lymphocytes depend on WNK1 signaling

Research Article

SCIENCE SIGNALING
27 Aug 2024 Vol 17, Issue 851
[DOI: 10.1126/scisignal.ade1119]

Il-Young Hwang, Ji Sung Kim, Kathleen A. Harrison, Chung Park, Chong Shan Shi, John H. Kehrl*

B-cell Molecular Immunology Section, Laboratory of Immunoregulation, National Institute of Allergy and Infectious Diseases, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.

  1. * Corresponding author. Email: jkehrl@niaid.nih.gov

Editor's summary

ケモカインであるCXCL13はB細胞に対し、炎症部位への遊走を可能にする細胞骨格の変化を誘導する。Hwangらは、B細胞においてCXCL13によって引き起こされる初期のシグナル伝達イベントとして、キナーゼWNK1の活性化を特定した。初代培養マウスB細胞およびB細胞株において、WNK1の薬理学的阻害または遺伝子欠損によりCXCL13誘導性の細胞骨格の変化と遊走が阻害された。またマウスリンパ節では、WNK1の薬理学的阻害によってB細胞の運動性も低下した。このようにCXCL13に対するB細胞の応答の低下は、がんおよび高血圧の治療標的になりえるWNK1阻害の副作用となる可能性がある。—Wei Wong

要約

リガンドと結合したケモカイン受容体は、ヘテロ三量体Gαiタンパク質のヌクレオチド交換を引き起こし、これが細胞骨格再構築および細胞極性の変化を刺激する。これら細胞性変化を担っているシグナル伝達イベントについて理解を深めるため、われわれはマウス脾臓B細胞においてケモカイン受容体CXCR5との結合後に認められるF-アクチンの初期の動態変化に注目した。CXCR5リガンドであるCXCL13を曝露させたとき、10秒以内に、3次元の層状の偽足およびF-アクチンに富んだ稜状の構造が認められた。この一過性のF-アクチンの増加は、Gαi2/3シグナル伝達、PI3K/AKT経路、ERK活性化、ホスホリパーゼCの活性、およびDock2(dedicator of cytokinesis 2)に媒介されるRac1/2活性化に依存していた。イムノブロット解析から、初期のAKTエフェクター候補としてキナーゼWNK1(with no lysine kinase 1)が同定された。特異的WNK阻害剤でB細胞を処理したところ、F-アクチン動態が破綻し、B細胞の極性、運動性および走化性が損なわれた。これらの変化は、CRISPR-Cas9によりWnk1の遺伝子編集を行ったマウスB細胞株でも認められたことからも、WNK1がB細胞の増殖に寄与することが示唆された。生体マウスにWNK阻害剤を単回投与したところ、リンパ節中のB細胞の運動および極性が一過性に低下した。これらの結果は、CXCL13に対するB細胞の応答をWNK1シグナル伝達が維持していることを示し、さらに、がんの進行と血圧調節に関与するWNK1の薬理学的阻害は、液性免疫に影響する可能性があることを示唆している。

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