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- 侵入したHCMV粒子によるUS28の送達がAkt活性を急速に減弱させ、単球におけるHCMV溶解複製を抑制する
侵入したHCMV粒子によるUS28の送達がAkt活性を急速に減弱させ、単球におけるHCMV溶解複製を抑制する
Delivery of US28 by incoming HCMV particles rapidly attenuates Akt activity to suppress HCMV lytic replication in monocytes
SCIENCE SIGNALING
27 Aug 2024 Vol 17, Issue 851
[DOI: 10.1126/scisignal.adn8727]
Jamil Mahmud1, Brittany W. Geiler1, Juthi Biswas1, Michael J. Miller1, Julia E. Myers2, 3, Stephen M. Matthews2, 3, Amanda B. Wass2, 3, Christine M. O'Connor2, 3, 4, Gary C. Chan1, *
- 1 Department of Microbiology and Immunology, SUNY Upstate Medical University, Syracuse, NY 13210, USA.
- 2 Infection Biology, Lerner Research Institute, Sheikha Fatima bint Mubarak Global Center for Pathogen and Human Health Research, Cleveland Clinic, Cleveland, OH 44195, USA.
- 3 Case Comprehensive Cancer Center, Cleveland, OH 44106, USA.
- 4 Department of Molecular Medicine, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine of Case Western Reserve University, Cleveland, OH 44195, USA.
- * Corresponding author. Email: chang@upstate.edu
Editor's summary
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染は広く蔓延しており、感染宿主の全身の至る所に急速に拡散するが、その一因はHCMVが溶解複製を引き起こすことなく血中単球に感染できることにある。Mahmudらは、HCMVが宿主のシグナル伝達経路を破壊して非溶解性の静止感染を引き起こす仕組みを調べた。そして、感染の初期段階において、US28と呼ばれるタンパク質のウイルス粒子による送達が受容体EGFRの活性化の抑制に重要であることを明らかにした。結果的に、感染した単球では下流のキナーゼAktの活性化が制限され、静止感染が成立した。このように、感染初期のUS28によるAkt活性の誘導を抑制することで、HCMVに感染した単球の生存が確保され、溶解複製の開始が妨げられる。—Wei Wong
要約
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の拡散には、単球内で非生産的な静止感染を確立することがきわめて重要である。われわれは、HCMVが単球内で静止感染を確立する機構を調べた。US28は、ウイルスにコードされたGタンパク質共役受容体(GPCR)であり、骨髄細胞系列の細胞への非溶解性静止感染にきわめて重要である。われわれは、事前に形成されたUS28がHCMVウイルス粒子によって単球へ迅速に送達される一方で、US28の新規合成は数日間遅延することを明らかにした。US28欠損型組換え変異ウイルス(US28Δ)は、静止感染を確立できず、子孫ウイルスを産生できる完全に生産的な溶解感染を引き起こした。US28Δ HCMVに感染すると、セリンおよびスレオニンキナーゼAktのSer473およびThr308のリン酸化が引き起こされたのに対して、野生型(WT)ウイルス感染後はAktのSer473のみがリン酸化された。Aktの二重リン酸化を阻害すると、US28Δの溶解複製が妨げられ、構成的にリン酸化されたAkt変異体を異所発現させると、野生型HCMVの溶解複製が引き起こされた。機構的に、われわれは、WTウイルスの侵入時に誘導される上皮増殖因子受容体(EGFR)シグナル伝達を減弱させるのにUS28が必要十分であり、それによってAktのSer473の部位特異的なリン酸化を引き起こすことを明らかにした。このように、粒子によって送達されたUS28は、ウイルス侵入時にHCMVに誘導されるEGFRの活性化を抑制することによってAkt活性を微調整し、単球内の静止感染を可能にする。