甘さの構造

Sweet structures

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SCIENCE SIGNALING
10 Jun 2025 Vol 18, Issue 890
DOI: 10.1126/scisignal.adz5144

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: jfoley@aaas.org

Z. Juen, Z. Lu, R. Yu, A. N. Chang, B. Wang, A. W. P. Fitzpatrick, C. S. Zuker, The structure of human sweetness. Cell 10.1016/j.cell.2025.04.021, (2025).

ヒト甘味受容体のクライオEM構造から、甘味検出の分子基盤が明らかになっている。

甘味は、幅広い糖や人工甘味料に反応する口腔の味覚受容体細胞によって検出される。ヒトの甘味受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のクラスCファミリーに属するTAS1R2とTAS1R3のヘテロ二量体である。Juenらは、バキュロウイルス系を用いてヒトTAS1R2およびTAS1R3(Gタンパク質成分を含む)を発現させて精製し、スクラロースまたはアスパルテームのいずれかと結合したTAS1R2-TAS1R3複合体のクライオEM構造を決定した。スクラロースとアスパルテームはいずれも、天然糖よりはるかに高い親和性で結合する。細胞外アゴニスト結合ドメインの解析とモデリングにより、スクラロース(およびアスパルテーム)はTAS1R2サブユニットに結合するがTAS1R3には結合せず、TAS1R3のアゴニスト結合ポケットは開いたままであることが示された。著者らは、アゴニスト結合ポケットの保存された受容体残基のうち、その変異により、変異TAS1R2サブユニットを発現する細胞においてスクラロースに対するカルシウムシグナル伝達応答が阻害される残基を同定した。これらと同じ残基が、TAS1R2とアスパルテームの相互作用を媒介した。スクラロース、受容体、Gタンパク質を含有する粒子のさらなる構造解析により、人工甘味料と結合したTAS1R2はGタンパク質共役を媒介するが、TAS1R3は媒介しないことがわかった。この性質は、ヘテロ二量体の1つのサブユニットがアゴニストと結合し、もう1つのサブユニットがGタンパク質と共役する、GABAB受容体(もう1つのクラスCファミリーのGPCR)の性質とは異なる。TAS1R2の第3細胞内ループおよびC末端尾部の残基の変異により、細胞アッセイにおいてスクラロースに対する応答が阻害された。総合すると、これらの結果は、甘味検出の構造的基盤を明らかにしており、甘味受容体の機能を制御しうる化合物の設計の指針となる可能性がある。

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