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低酸素状態が腸を保護する

Hypoxia protects the gut

Editors' Choice

SCIENCE SIGNALING
13 Aug 2024 Vol 17, Issue 849
[DOI: 10.1126/scisignal.ads1861]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

H. P. Savage, D. J. Bays, C. R. Tiffany, M. A. F. Gonzalez, E. J. Bejarano, T. P. Carvalho, Z. Luo, H. L. P. Masson, H. Nguyen, R. L. Santos, K. L. Reagan, G. R. Thompson, A. J. Bäumler, Epithelial hypoxia maintains colonization resistance against Candida albicans. Cell Host Microbe 32, 1103-1113.e6 (2024).

A. A. Mishra, A. Y. Koh, Breathe and bloom: Gut hypoxia limits C. albicans growth. Cell Host Microbe 32, 1041-1043 (2024).

抗菌薬に誘導される腸管内の低酸素状態の消失がマウスにおいてカンジダ・アルビカンス(C. albicans)の増殖をブーストする。

日和見真菌病原体カンジダ・アルビカンス(C. albicans)の腸内での増殖は、宿主防御と片利共生微生物、なかでもクロストリジウム綱(Clostridia)とバクテロイデス属(Bacteroides)に属する種によって抑制されている(MishraおよびKoh参照)。クロストリジウムは、腸上皮のペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γ(PPARγ)シグナル伝達を刺激することによって盲腸内腔の低酸素状態を維持する短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する。抗菌薬を投与すると、大腸内腔の酸素量が増加してカンジダ・アルビカンスの繁殖が可能になり、それが侵襲性の感染症を引き起こしうる。Savageらは、非標的メタボロミクススクリーニングによって、単糖類が無菌マウスの盲腸内でのカンジダ・アルビカンスの増殖の燃料となることを見出した。この炭素源は、好気条件下ではin vitroでカンジダ・アルビカンスの増殖を支えたが、嫌気条件下では支えなかった。マウスにストレプトマイシンを投与すると、腸内のクロストリジウムとSCFAが消失し、盲腸の低酸素状態が減弱し、マウスにカンジダ・アルビカンスが定着しやすくなった。ストレプトマイシンを投与したマウスにPPARγアゴニストの5-ASAを投与しても、クロストリジウムもSCFAも回復せず、小腸炎にも抗菌ペプチドの産生にも実質的には影響しなかったが、盲腸の低酸素状態とカンジダ・アルビカンスの定着に対する抵抗性は回復した。ストレプトマイシンを投与したマウスに、ヒト由来のクロストリジウム株の混合物またはストレプトマイシンと5-ASAで処理されたドナーマウスから採取した盲腸内容物を経口投与した場合も、腸内の低酸素状態が回復し、カンジダ・アルビカンスの定着に対する抵抗力が回復した。まとめると、これらの知見は、腸内の低酸素状態を回復させることで、抗菌薬に誘導されるカンジダ・アルビカンスの過剰増殖に対する感受性が軽減されることを示しており、血液系腫瘍患者など、抗菌薬を投与されて日和見カンジダ・アルビカンス感染症に対してとくに脆弱になっており、プロバイオティクスを安全に摂取できない患者のための治療法候補を提供する可能性がある。

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