DNAが脳卒中の再発を誘発

Stroke of DNA

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SCIENCE SIGNALING
20 Aug 2024 Vol 17, Issue 850
[DOI: 10.1126/scisignal.ads4720]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: abaek@aaas.org

J. Cao, S. Roth, S. Zhang, A. Kopczak, S. Mami, Y. Asare, M. K. Georgakis, D. Messerer, A. Horn, R. Shemer, C. Jacqmarcq, A. Picot, J. P. Green, C. Schlegl, X. Li, L. Tomas, A. Dutsch, T. G. Liman, M. Endres, S. R. Wernsdorf, C. Fürle, O. Carofiglio, J. Zhu, D. Brough, DEMDAS Study Group, V. Hornung, M. Dichgans, D. Vivien, C. Schulz, Y. Dor, S. Tiedt, H. B. Sager, G. M. Grosse, A. Liesz, DNA-sensing inflammasomes cause recurrent atherosclerotic stroke. Nature, 10.1038/s41586-024-07803-4 (2024).

循環血中DNAによるインフラマソームの活性化が、アテローム性動脈硬化症に伴う再発性脳卒中を誘発する。

アテローム性動脈硬化症の患者では、虚血性損傷の初発後に再発性脳卒中が生じるリスクが高い。Caoらは、循環血中DNAがDNA応答性AIM2というインフラマソームを活性化し、それによりプラークの不安定化とアテローム血栓症の増加のために、再発性脳卒中が誘発されることを見いだした。彼らは実験的な脳卒中と頚動脈の易破綻性プラークを有するマウスモデルを作製し、再発性虚血イベントが発生することを確認した。脳卒中後のアテローム性動脈硬化プラークを解析したところIL-1βの存在量増加が認められ、局所的なインフラマソームの活性化が果たす役割が示唆された。インフラマソームの阻害は、プラーク破綻の抑制に十分であった。脳卒中後には血清中の無細胞DNA(cfDNA)が増加しており、DNAがリガンドとなるAIM2インフラソームを阻害するだけで、脳卒中およびインフラマソームにより誘導される総頚動脈(CCA)プラークからのIL-1β放出が十分に阻止された。好中球細胞外トラップ(NETosis)の形成は、脳卒中後の主なcfDNAの供給源であり、NETosisを抑制することで脳卒中後のcfDNA増加のみならずインフラマソーム活性化も阻害された。実験的に脳卒中を誘発した後、遺伝子組換えDNaseを投与してcfDNAを抑制することでも、プラーク中のインフラマソーム活性化が低下し、再発性虚血イベントが阻止された。それに一致して、脳卒中患者では血漿中cfDNA量が高く、動脈内膜切除検体中のプラークではインフラマソームの活性化を示すマーカーが増加していた。これらの知見から、アテローム性動脈硬化症患者において虚血イベント後に血管リスクが増大することの背景的根拠の候補が解明され、循環血中DNAの抑制を中心とする治療戦略が示唆された。

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