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宿主プロテアーゼKLK5がスパイクタンパク質を刺激して活性化させ、ヒトベータコロナウイルスの複製と肺炎症を促進する

The host protease KLK5 primes and activates spike proteins to promote human betacoronavirus replication and lung inflammation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
20 Aug 2024 Vol 17, Issue 850
[DOI: 10.1126/scisignal.adn3785]

Hyunjoon Kim1, †, Yeonglim Kang1, †, Semi Kim1, Dongbin Park1, Seo-Young Heo1, Ji-Seung Yoo1, 2, Isaac Choi1, Monford Paul Abishek N1, Jae-Woo Ahn1, Jeong-Sun Yang3, Nayeon Bak1, 4, Kyeong Kyu Kim4, Joo-Yeon Lee3, Young Ki Choi1, 4, *

  1. 1 Center for Study of Emerging and Re-emerging Viruses, Korea Virus Research Institute, Institute for Basic Science, Daejeon 34126, Republic of Korea.
  2. 2 School of Life Sciences, BK21 FOUR KNU Creative BioResearch Group, Kyungpook National University, Daegu 41566, Republic of Korea.
  3. 3 Center for Emerging Virus Research, National Institute of Infectious Diseases, Korea National Institute of Health (KNIH), 187 Osongsaengmyeong2-ro, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungbuk 28160, Republic of Korea.
  4. 4 Department of Metabiohealth, Sungkyun Convergence Institute, Sungkyunkwan University (SKKU), Suwon 16419, Republic of Korea.
  5. * Corresponding author. Email: choiki55@ibs.re.kr
  6. These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

コロナウイルスが細胞に侵入して感染するためには、宿主プロテアーゼによってスパイクタンパク質の刺激部位と活性化部位が連続的に処理されなければならない。Kimらは、分泌されたプロテアーゼKLK5がベータコロナウイルスのスパイクタンパク質の両部位を切断することを明らかにした。KLK5の存在量は、ベータコロナウイルスに感染したヒト気道細胞で増加し、KLK5をノックダウンまたは阻害すると、ベータコロナウイルスの細胞内での複製が減少した。また、KLK5阻害薬は、SARS-CoV-2またはMERS-CoVに感染したマウスの肺炎症を抑制したことから、既知および新興のコロナウイルスによって引き起こされる疾患の治療に使用可能であることが示された。—Annalisa M. VanHook

要約

コロナウイルスは、宿主プロテアーゼに依存してウイルススパイクタンパク質を活性化し、それによって宿主細胞膜との融合とウイルスゲノムRNAの宿主細胞質内への放出を促進する。このようなウイルスの宿主・組織・細胞指向性は、宿主内の特異的な宿主プロテアーゼの分布によって決まる。本稿でわれわれは、ヒト気道細胞から分泌され、複数のヒトベータコロナウイルスによって利用される主要な宿主プロテアーゼとして、カリクレイン(KLK)ファミリーに属するKLK5を同定した。KLK5はin vitroにおいて、多様なヒトベータコロナウイルス由来のスパイクタンパク質の刺激(S1/S2)部位と活性化(S2′)部位の両方を切断した。対照的に、KLK12とKLK13は、S2′部位またはS1/S2部位のいずれか一方への選好性をそれぞれに呈した。KLK12とKLK13は協働してSARS-CoV-2およびMERS-CoVのスパイクタンパク質を活性化するが、KLK5は単独で効率的に、SARS-CoV-2などのいくつかのヒトベータコロナウイルス由来のスパイクタンパク質を活性化した。分化したヒト気管支上皮細胞(HBEC)にヒトベータコロナウイルスを感染させると、KLK5の増加が誘導され、それによってウイルスの複製が促進された。さらに、KLK5を阻害するウルソール酸や他の関連する植物由来トリテルペノイドは、HBECにおいてSARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2の複製を効率的に抑制し、MERS-CoVまたはSARS-CoV-2に感染したマウスにおいて肺炎症を軽減した。われわれは、KLK5が汎コロナウイルス宿主因子であり、現在および将来のコロナウイルス誘導性疾患の有望な治療標的であることを提唱する。

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