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アトラクター・ランドスケープ解析によって、DNA損傷に対する細胞応答を制御するp53ネットワーク内のフィードバックループが明らかになる
Attractor Landscape Analysis Reveals Feedback Loops in the p53 Network That Control the Cellular Response to DNA Damage
Sci. Signal., 20 November 2012
Vol. 5, Issue 251, p. ra83
[DOI: 10.1126/scisignal.2003363]
Minsoo Choi1*, Jue Shi2*, Sung Hoon Jung1,3, Xi Chen2, and Kwang-Hyun Cho1†
1 Department of Bio and Brain Engineering, Korea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST), Daejeon 305-701, Republic of Korea.
2 Center for Quantitative Systems Biology and Department of Physics, Hong Kong Baptist University, Hong Kong, China.
3 Department of Information and Communication Engineering, Hansung University, Seoul 136-792, Republic of Korea.
* These authors contributed equally to this work.
† To whom correspondence should be addressed. E-mail: ckh@kaist.ac.kr
要約: p53タンパク質は腫瘍抑制因子として機能し、DNA損傷に応答して細胞周期停止またはアポトーシスを誘発することができる。われわれはBooleanネットワークモデリングとアトラクター・ランドスケープ解析(attractor landscape analysis)を利用して、分子の活性化状態の特定の組み合わせが特有の細胞事象に対応するという、単純なp53ネットワークの状態遷移動力学について解析した。その結果、DNA損傷に対する細胞応答を決定する5つの重要な相互作用をネットワーク内で特定した。また、これらの相互作用のどれかが欠けていると想定するシミュレーションによって、細胞死応答に対応する持続的なp53活性と相関する状態が作り出された。乳がん細胞株MCF7のDNA損傷に対する細胞応答と、Mdm2(murine double minute 2)阻害剤のニュートリン3の作用に関するアトラクター・ランドスケープ解析によって、ニュートリン3は細胞死の誘発において限定的な有効性を示す可能性がが示唆された。これは、ニュートリン3を用いたシミュレーションでは細胞死の状態が大規模に誘導されることはなく、その代わりに、周期変動性のp53の変化と細胞周期停止に一致する状態が作り出されたからである。さらに、アトラクター・ランドスケープ解析によって、Wip1の阻害とニュートリン3の組合せは相乗効果を示し、p53活性の持続的な亢進を刺激して、p53を介する細胞死を促進する可能性も示唆された。われわれは、MCF7細胞でp53の蛍光レポーターの単一細胞イメージングを行い、p53活性の刺激と細胞死の誘発におけるこのような相乗効果を確認した。以上のように、p53ネットワーク動力学とその調節に関するアトラクター・ランドスケープ解析は、可能性を秘めたがんに対する治療戦略を特定することができる。
M. Choi, J. Shi, S. H. Jung, X. Chen, K.-H. Cho, Attractor Landscape Analysis Reveals Feedback Loops in the p53 Network That Control the Cellular Response to DNA Damage. Sci. Signal. 5, ra83 (2012).