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発生神経科学
性同一性のエピジェネティックなプログラミング

Developmental Neuroscience
Epigenetically programming gender identity

Editor's Choice

Sci. Signal., 12 May 2015
Vol. 8, Issue 376, p. ec120
DOI: 10.1126/scisignal.aac5294

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. M. Nugent, C. L. Wright, A. C. Shetty, G. E. Hodes, K. M. Lenz, A. Mahurkar, S. J. Russo, S. E. Devine, M. M. McCarthy, Brain feminization requires active repression of masculinization via DNA methylation. Nat. Neurosci. 18, 690–697 (2015). [PubMed]

われわれの生物学的性別はY染色体の有無によって決定づけられる。しかし脳は、出生前後の短い感受期に精巣ステロイド(アンドロゲンやその代謝物のエストラジオールなど)に曝露されない限り、女性になるべく配線される。脳内で性的二形成が最も顕著な領域は視索前野(POA)である。Nugentらは、POAにおいてステロイドに誘導される性同一性がエピジェネティックな機構に、具体的にはDNAメチル化に媒介されることを見出した。最もよく特徴づけられているDNAメチル化の形態は、グアニンに隣接するシトシン残基(CpGアイランド)で起きる。DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)の活性とCpGのメチル化は、新生雄ラットのPOAでは新生雌ラットのPOAよりも低かった。新生雌ラットにエストラジオールを皮下注射すると、DNMTの活性とCpGのメチル化が数日間減少した。エストラジオールを注射した場合もしなかった場合も、感受期にあたる周産期の前後でDNMTの活性に差異は認められなかった。DNMT阻害薬のゼブラリンまたはRG108を新生雌ラットに脳内注射すると、DNMTの活性に対するエストラジオールの作用を擬態した作用がみられ、雄マウスでより典型的にみられるニューロン形態、タンパク質マーカーのパターン、成体の不安に関連する性行動が引き起こされたが、発情周期への影響はなかった。さらに、出生時からPOAのDnmt3aを欠失している成体雌マウスは、雄マウスでより典型的にみられる不安症と性行動を有した。ただし、エストラジオールへの曝露とは異なり、Dnmt3aのノックアウトによる雄性化作用は感受期にあたる周産期に限定されなかったことから、脳の雌性表現型は永続的なDNAのメチル化によって維持されることが示唆されている。出生後の雄または雌ラットから採取されたPOAのRNA配列決定では、雌においてDNMT阻害薬によって抑制解除される遺伝子のサブセットが性分化に関連することが明らかになった。今回の知見は、神経学的性同一性がどのように決定されるのかをさらに明らかにするものである。

L. K. Ferrarelli, Epigenetically programming gender identity. Sci. Signal. 8, ec120 (2015).

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2015年5月12日号

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発生神経科学
性同一性のエピジェネティックなプログラミング

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