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がんの痛みを治療する

CANCER
Treating cancer pain

Editor's Choice

Sci. Signal. 30 Jun 2015:
Vol. 8, Issue 383, pp. ec174
DOI: 10.1126/scisignal.aac8722

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Selvaraj, V. Gangadharan, C. W. Michalski, M. Kurejova, S. Stösser, K. Srivastava, M. Schweizerhof, J. Waltenberger, N. Ferrara, P. Heppenstall, M. Shibuya, H. G. Augustin, R. Kuner, A functional role for VEGFR1 expressed in peripheral sensory neurons in cancer pain. Cancer Cell 27, 780-796 (2015). [PubMed]

多くのがんに伴う疼痛は、患者のQOLを低下させる。腫瘍は神経と血管に取り囲まれている場合が多く、血管内皮増殖因子(VEGF)などの血管リモデリング因子は、腫瘍から分泌されることが多い。Selvarajらは、マウスがんモデルにおいて、VEGFシグナル伝達が末梢ニューロンの感受性を亢進させることを見出した。免疫染色解析により、マウス後根神経節(DRG)切片の感覚ニューロンの細胞体、培養マウスDRGニューロン、およびマウス後肢皮膚の末梢神経においてVEGF受容体1(VEGFR1)が豊富に存在することが明らかになった。VEGF-Aの足底内注射によって、マウス後肢の機械感受性と温度感受性が用量依存的に亢進したが、その他のVEGFファミリーリガンドの注射ではそのような亢進はみられなかった。この感受性亢進は、後肢をVEGFR1に対する中和抗体で前処理することによって阻止されたが、VEGFR2またはニューロピリンに対する抗体では阻止されず、キナーゼドメインのないVEGFR1をもつように遺伝子改変されたマウスでは、感受性亢進が認められなかった。伏在神経が付随した肢皮膚のex vivo標本でも、VEGF-Aの存在下で機械感受性の亢進が認められた。DRGニューロン培養をさまざまなキナーゼ阻害剤に曝露することにより、機械刺激または温度刺激、あるいはその両方に対する感受性亢進を仲介する、VEGF-A/VEGFR1経路のいくつかの下流メディエーターが明らかになった。溶骨性肉腫同種移植担がんマウスにおいては、DRGニューロンのVEGFR1存在量と、侵害受容感受性が増加した。溶骨性肉腫または肺がん同種移植マウスにおいては、VEGFR1の感覚ニューロン特異的ノックダウンまたは条件付き欠失により、腫瘍誘発性の機械および温度感受性が阻止されるとともに、増殖する腫瘍の周囲でのニューロンの肥大と発芽が阻止された。VEGF-AまたはVEGFR1に対する遮断抗体の局所注射によって、あるいはVEGFR1の細胞外リガンド結合ドメインの注射によって、マウスにおける溶骨性肉腫誘発性の疼痛過敏性は弱まった。乳がんの大型骨への転移のマウスモデルにおいては、VEGFR1遮断抗体の全身投与によって、誘発性の機械感受性と自発性(非誘発性)の肢痛発現の両方が低下するとともに、腫瘍周囲でのニューロンの発芽が減少した。ヒト膵管腺がん患者では、患者報告による疼痛の知覚が、膵生検検体における腫瘍随伴ニューロンのVEGFR1染色の強度および範囲と、正の相関を示した。これらの結果から、VEGFR遮断抗体によって、がん患者の疼痛が抑制される可能性が示唆される。

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2015年6月30日号

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Research Article

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