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肺の生物学
粘液を産生する細胞から粘液を排除する細胞への転換

LUNG BIOLOGY
Converting mucus-making cells into mucus-clearing cells

Editor's Choice

Sci. Signal. 08 Dec 2015:
Vol. 8, Issue 406, pp. ec362
DOI: 10.1126/scisignal.aad9989

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. Lafkas, A. Shelton, C. Chiu, G. de Leon Boenig, Y. Chen, S. S. Stawicki, C. Siltanen, M. Reichelt, M. Zhou, X. Wu, J. Eastham-Anderson, H. Moore, M. Roose-Girma, Y. Chinn, J. Q. Hang, S. Warming, J. Egen, W. P. Lee, C. Austin, Y. Wu, J. Payandeh, J. B. Lowe, C. W. Siebel, Therapeutic antibodies reveal Notch control of transdifferentiation in the adult lung. Nature 528, 127–131 (2015). [PubMed]

粘液の排除異常や産生過剰は、喘息、慢性閉塞性肺疾患など、複数の呼吸器疾患に寄与する。気道において、粘液は上皮に存在するクラブ細胞と杯細胞によって産生され、上皮に存在する線毛細胞によって輸送される。発生の際には、Jaggedファミリー(JAG1、JAG2)のリガンドが隣接細胞のNOTCHシグナル伝達を活性化し、これらの細胞の運命を特定する。成体マウスを用いた実験で、Lafkasらは、アイソフォーム特異的に機能を阻害する抗体でJAG1を阻害すると、細胞死も細胞増殖も変化しないまま、クラブ細胞の数が減少し、線毛細胞の数が増加することを見出した。JAG1とJAG2の両方の機能を特異的抗体で阻害すると、2つの部位を除いてほぼすべてのクラブ細胞が失われ、上皮の線毛細胞数は増加した。JAGを遮断すると、クラブ細胞から線毛細胞への分化転換と一致して、クラブ細胞と線毛細胞の両方のマーカーを有する少数の細胞の出現が誘導された。また、クラブ細胞を用いた系列追跡実験では、JAGの阻害によってこのような分化転換イベントが促進された。NOTCHのさまざまなアイソフォームの機能を特異的に阻害する抗体にマウスを曝露させたところ、NOTCH2がJAG1に媒介されるクラブ細胞の維持に関与する主要な受容体であることが示された。粘液の産生過剰を伴う呼吸器疾患のマウスモデルでは、JAG1のみについて特異的に、またはJAG1とJAG2の両方について、JAGの機能を阻害すると、炎症刺激の直後に阻害物質を投与した場合は杯細胞の異形成が減少し、炎症刺激から1ヵ月以上経過して異形成が十分に確立された頃に阻害物質を投与した場合は杯細胞の異形成が元に戻った。JAGを遮断しても、炎症の重症度や炎症刺激後の免疫細胞の浸潤は変化しなかったことから、その効果は上皮に特異的であり、免疫応答の変化に続発するわけではないことが示唆される。これらの結果は、成体気道の細胞の可塑性を実証するだけでなく、JAGの選択的拮抗作用が粘液の過剰産生や排除異常を伴う気道疾患に特異的な治療選択肢になる可能性があることを示唆している。

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2015年12月8日号

Editor's Choice

肺の生物学
粘液を産生する細胞から粘液を排除する細胞への転換

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