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Hippoが入り乱れると細胞増殖は抑制されない

Mixed-up Hippos don’t inhibit cell growth

Editor's Choice

Sci. Signal. 05 Jul 2016:
Vol. 9, Issue 435, pp. ec154
DOI: 10.1126/scisignal.aah4597

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. J. Rawat, D. Araiza-Olivera, L. E. Arias-Romero, O. Villamar-Cruz, T. Y. Prudnikova, H. Roder, J. Chernoff, H-ras inhibits the Hippo pathway by promoting Mst1/Mst2 heterodimerization. Curr. Biol. 26, 1556–1563 (2016). [PubMed]

要約  Hippo経路は、増殖性のプログラムや生存促進性のプログラムを駆動する転写調節因子の核集積を制限することによって組織増殖を抑制し、腫瘍形成を抑制する。キナーゼHippoの哺乳類相同体(MST1、MST2)が活性化されると、キナーゼLATS1、LATS2がリン酸化されて活性化し、それによって転写共役因子YAP、TAZがリン酸化され、それらは細胞質内に保留され、その後、分解される。MST1、MST2はホモ二量体を形成するが、本稿でRawatらは、培養ヒト(HEK293)細胞において、遺伝子導入して発現させたMST1、MST2も、内在性のMST1、MST2も、ヘテロ二量体として免疫共沈降したと報告している。ヘテロ二量体の形成には、ホモ二量体の形成を媒介するのと同一のMST1とMST2のドメインが必要であった。精製されたタンパク質で形成される複合体の解離定数からは、MST1-MST2ヘテロ二量体のほうがMST1-MST1ホモ二量体またはMST2-MST2ホモ二量体よりも形成されやすいことが示唆され、in vitroのキナーゼアッセイでは、ヘテロ二量体のキナーゼ活性がホモ二量体よりも低いことが示された。増殖因子シグナル伝達を媒介するグアノシントリホスファターゼであるH-RASの腫瘍形成性活性型をコードするコンストラクトをHEK293細胞に遺伝子導入すると、MST1-MST2ヘテロ二量体の形成が促進され、LATSとYAPのリン酸化が減少した。この効果は、RASの下流で機能するいくつかのキナーゼのうちの1つであるMEKの薬理学的阻害薬を添加すると阻害された。MEKを経てキナーゼERKに至るシグナル伝達は、細胞の増殖と生存を促進する。野生型のマウス胚線維芽細胞(MEF)、MST1とMST2の両方を欠損させたMEFで活性型H-RASを発現させると、増殖亢進や、接触阻害には影響されない増殖など、発がん性形質転換に特有の細胞挙動が刺激された。しかし、MST1のみを欠損させたMEFで活性型H-RASを発現させると、このような挙動は刺激されなかったことから、H-RASに誘導される形質転換にはMST1-MST2ヘテロ二量体の形成が重要であることが示唆される。このように、MST1-MST2ヘテロ二量体の形成は、細胞増殖を抑制するHippo経路の能力を減少させ、RAS-MEK-ERKシグナル伝達による腫瘍形成の促進を可能にするもうひとつの機構となっている可能性がある。

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2016年7月5日号

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Hippoが入り乱れると細胞増殖は抑制されない

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