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ステロイドが炎症組織の粘着性を低下させる
Steroids make inflamed tissues less sticky
Sci. Signal. 25 Feb 2020:
Vol. 13, Issue 620, eabb4096
DOI: 10.1126/scisignal.abb4096
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
A. Ziogas, T. Maekawa, J. R. Wiessner, T. T. Le, D. Sprott, M. Troullinaki, A. Neuwirth, V. Anastasopoulou, S.Grossklaus, K.-J. Chung, M. Sperandio, T. Chavakis, G. Hajishengallis, V. I. Alexaki, DHEA inhibits leukocyte recruitment through regulation of the integrin antagonist DEL-1. J. Immunol. 204, 1214-1224 (2020).
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ステロイドホルモンであるDHEAは、インテグリンアンタゴニストDEL-1の産生を回復することで炎症を軽減する。
要約
炎症が生じている間、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインが血管内皮を活性化して、罹患組織への白血球の動員を促進する。血中の白血球は始め血管内皮に沿って転がり、その後、しっかりと停止する。この停止は、白血球のインテグリンと内皮細胞表面の間の接着相互作用に依存している。次に白血球は血管外に出て炎症部位に遊走する。Ziogasらは、ステロイドホルモンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の抗炎症性の根底にある機構を検討した。精巣挙筋炎症のマウスモデルにおいて、DHEAは血管内皮への白血球接着を阻害したが、インテグリンの活性化または血管内皮接着分子の存在量に直接影響することはなかった。ヒト内皮細胞(HUVEC)をTNFに曝露したとき、β2-インテグリンに媒介される内皮細胞への白血球接着を阻害する分泌性糖タンパク質であるDEL-1の、mRNAおよびタンパク質量が減少した。DHEAの前処理によりDEL-1産生に対するTNFの影響が解消され、これは、DHEAを介したキナーゼPI3KおよびAktの活性化、ならびに細胞表面受容体であるトロポミオシン関連キナーゼA(TRKA)に依存していた。リポ多糖誘導性肺炎症のマウスモデルにおいて、DHEA前処理マウスでは溶媒前処理マウスに比べて肺に動員される好中球数が減少していた。ただし、DEL-1欠損マウスではDHEAの抗炎症作用は消失していた。まとめるとこれらのデータは、DHEAがDEL-1の発現を回復させることでTRKA-PI3K-Akt軸を介して炎症を軽減すること、また、それに続いて炎症組織への白血球の接着と動員を阻害することを示唆している。この経路を治療標的とすることが、炎症性疾患の治療に役立つかもしれない。