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MTORC1依存性のリプログラミング

MTORC1-dependent reprogramming

Editor's Choice

Sci. Signal. 03 Nov 2020:
Vol. 13, Issue 656, eabf4729
DOI: 10.1126/scisignal.abf4729

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

Z.-F. Miao, M. A. Lewis, C. J. Cho, M. Adkins-Threats, D. Park, J. W. Brown, J.-X. Sun, J. R. Burclaff, S. Kennedy,J. Lu, M. Mahar, I. Vietor, L. A. Huber, N. O. Davidson, V. Cavalli, D. C. Rubin, Z.-N. Wang, J. C. Mills, A dedicated evolutionarily conserved molecular network licenses differentiated cells to return to the cell cycle. Dev. Cell 55,178-194.e7 (2020).
Google Scholar

DDIT4およびIFRD1が再生修復におけるMTORC1の阻害と再活性化を引き起こす。

要約

損傷によって傷害または破壊された細胞は、特有の幹細胞の活性化または成熟した分化細胞のリプログラミングのいずれかによって補充されると考えられる。いくつかの器官では、修復に伴うリプログラミングのためには機構的ラパマイシン標的タンパク質複合体1(MTORC1)シグナル伝達を一過性に阻害し、細胞種特異的な構成要素のオートファジー分解を刺激する必要がある。これにより幹細胞と前駆細胞の遺伝子発現が再活性化され、後にMTORC1シグナル伝達が再開される。これが細胞増殖を促進し、失われた細胞を分化によって補充できる細胞を生み出す。同様にMTORC1シグナル伝達の再活性化は、代謝的に静止期にある腸管および骨格筋の幹細胞が細胞周期に再進入するためにも必要である(Johnson and Lengner論節参照)。Miaoらは、マウスの胃および膵臓において一過性のMTORC1抑制により引き起こされる修復には、Ddit4DNA damage-induced transcript 4)およびIfrd1interferon-related developmental regulator 1)の誘導が必要であることを報告している。マウスおよびオルガノイドを用いた実験から、DDIT4(MTORC1の負の調節因子であるTSC1およびTSC2を活性化することでMTORC1シグナル伝達を阻害する)が、損傷後初期に生じるMTORC1シグナル伝達の阻害、並び脱分化に伴うオートファジーとリソソーム活性の誘導のために必要であることが示された。DDIT4誘導性のMTORC1抑制を維持するためには、p53を必要とした。その後のp53分解が関わると思われる機構を介した細胞増殖の誘導には、IFRD1(リジンの脱アセチル化に関与している)が必要であった。IFRD1の非存在下ではアセチル化がp53を分解から保護し、アセチル化p53が蓄積した。Ddit4およびIfrd1の誘導は、マウスにおける肝臓および腎臓の修復、アホロートルにおける四肢再生、並びにショウジョウバエにおける腸修復過程においても認められた。このことは、組織修復のためこのような損傷誘導性のMTORC1依存性プログラムが、保存されていることを示唆している。

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2020年11月3日号

Editor's Choice

MTORC1依存性のリプログラミング

Research Article

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