- ホーム
- 変異型p53に薬物を投与する
変異型p53に薬物を投与する
Drugging mutant p53
Sci. Signal. 16 Feb 2021:
Vol. 14, Issue 670, eabh0347
DOI: 10.1126/scisignal.abh0347
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
S. Chen, J.-L. Wu, Y. Liang, Y.-G. Tang, H.-X. Song, L.-L. Wu, Y.-F. Xing, N. Yan, Y.-T. Li, Z.-Y. Wang, S.-J. Xiao, X.Lu, S.-J. Chen, M. Lu, Arsenic trioxide rescues structural p53 mutations through a cryptic allosteric site. Cancer Cell 39, 225-239.e8 (2021).
Google Scholar
亜ヒ酸は、p53に構造的変異を有する腫瘍に対して有効かもしれない。
要約
タンパク質p53の変異は、がんに高頻度でみられ、腫瘍の増殖を駆動する。しかし、多様なp53変異を選択的に標的とし、正常な機能を回復させることができる薬物を見つけるのは難しい課題である。Chenらはそのような薬物の候補として、長らく白血病の一種を治療するために別のタンパク質を標的として使用されている薬物を見出した。著者らは、薬物スクリーニングと結晶構造解析から開始し、亜ヒ酸(ATO)がアロステリック部位の複数のシステインと共有結合することによってp53に構造的変異(DNA結合ドメイン[DBD]の折り畳みを不安定化する変異)を有する腫瘍細胞株の増殖を抑制することを発見した。ATOが結合すると、DBDの安定性が回復し、結果的に、変異型タンパク質は野生型の転写機能を取り戻した。このような効果はマウスにおいて多様な腫瘍タイプの細胞株異種移植片でも患者由来異種移植片でも確認されたことから、ATOはp53に構造的変異を有する腫瘍の治療という追加的な目的でも使用可能であることが示唆された。