腫瘍進展のためのギ酸

Formate for tumor progression

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
31 May 2022 Vol 15 Issue 736
DOI: 10.1126/scisignal.add1844

ANNALISA M. VANHOOK

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: avanhook@aaas.org

D. Ternes, M. Tsenkova, V. I. Pozdeev, M. Meyers, E. Koncina, S. Atatri, M. Schmitz, J. Karta, M. Schmoetten, A. Heinken, F. Rodriguez, C. Delbrouck, A. Gaigneaux, A. Ginolhac, T. T. D. Nguyen, L. Grandmougin, A. Frachet-Bour, C. Martin-Gallausiaux, M. Pacheco, L. Neuberger-Castillo, P. Miranda, N. Zuegel, J.-Y. Ferrand, M. Gantenbein, T. Sauter, D. J. Slade, I. Thiele, J. Meiser, S. Haan, P. Wilmes, E. Letellier, The gut microbial metabolite formate exacerbates colorectal cancer progression. Nat. Metab. 4, 458-475 (2022).

M. A. Casasanta, C. C. Yoo, B. Udayasuryan, B. E. Sanders, A. Umaña, Y. Zhang, H. Peng, A. J. Duncan, Y. Wang, L. Li, S. S. Verbridge, D. J. Slade, Fusobacterium nucleatum host-cell binding and invasion induces IL-8 and CXCL1 secretion that drives colorectal cancer cell migration. Sci. Signal. 13, eaba9157 (2020).

細菌代謝物が結腸直腸がんの進展を促進する

通常口腔内に認められるグラム陰性共生細菌であるフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)は、結腸直腸がん(CRC)の進展と関連している。F. nucleatumは結腸直腸腫瘍に侵入し、培養CRC細胞では浸潤性を促進する炎症促進性サイトカインの産生を誘導する(Casasantaらの論説参照)。Ternesらは、CRCの進展を促進するF. nucleatumの代謝物としてギ酸(1炭素代謝の中間体)を同定した。著者らは、バイオリアクター系でT18またはCaco-2 CRC細胞をF. nucleatumと共培養した結果、単培養した場合よりもCRC存在下の方がF. nucleatumは多くのギ酸を分泌し、CRCにおける腫瘍形成およびがん幹細胞性と関連する遺伝子発現および代謝的シグネチャー(グルタミン代謝への移行など)が促されたことを見いだした。同様の遺伝子発現シグネチャーが腫瘍検体中に認められ、これは患者のフソバクテリウム量と相関していた。ギ酸はin vitroにおいてHCT116 CRCの浸潤性を刺激し、またこの浸潤性は、がん幹細胞性の既知のプロモーターであるアリール炭化水素受容体に依存していた。F. nucleatumまたはギ酸をマウスのT18細胞の異種移植片に注射したとき、腫瘍における幹細胞性マーカーの発現およびグルタミン代謝が刺激され、さらに継代移植試験を通じて細胞の腫瘍形成能が示されたことで腫瘍細胞の幹細胞性の亢進が確認された。無菌マウスにF. nucleatumまたはギ酸を経口投与すると結腸の腫瘍発生が促進され、結腸内の炎症促進性免疫細胞数が増加した。その他の細菌種もCRCとの関連がみられ、さらにギ酸の増加は一部の化学療法抵抗性の肺がんと関連していた。これらのことは、細菌由来のギ酸が腫瘍進展または治療抵抗性に幅広い役割を果たしている可能性を示唆している。

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