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キナーゼ欠損型BTK変異体はキナーゼHCKの活性化を介してイブルチニブ耐性を付与する

Kinase-deficient BTK mutants confer ibrutinib resistance through activation of the kinase HCK

Research Article

SCIENCE SIGNALING
31 May Vol 15 Issue 736
DOI: 10.1126/scisignal.abg5216

Kamaldeep Dhami1, Anirban Chakraborty1, Tarikere L. Gururaja1, Leo W.-K. Cheung1,2, Chaohong Sun2, Felix DeAnda1, XiaoDong Huang1,*

  1. 1 Pharmacyclics LLC, an AbbVie Company, South San Francisco, CA 94080, USA.
  2. 2 AbbVie Inc., North Chicago, IL 60064, USA.

* Corresponding author. Email: xxhuang@gmail.com

血液がんにおいて変化するキナーゼの任務

キナーゼBTKの変異は、慢性リンパ性白血病(CLL)やその他のB細胞悪性腫瘍の増殖を促進する。BTK阻害薬イブルチニブに対する耐性は、BTKの薬物結合部位の後天的変異を介して生じると考えられる。Dhamiらは、そのような変異2種類が、BTKのキナーゼ活性を無効にするにもかかわらず、耐性を仲介し、BTKの活性を促進することを見出した。BTK-C481FおよびBTK-C481Yは、培養リンパ腫細胞においてキナーゼ活性が欠損していた。しかし、これらの変異BTKタンパク質は、B細胞受容体シグナル伝達に応答したリン酸化によって、キナーゼHCKと相互作用し、その自己活性化を促進することができたが、これは自己抑制ループを構造的に置き換えたことによると考えられた。HCKは続いて、野生型BTKの下流エフェクターをリン酸化し、細胞増殖を促進した。したがって、これらの変異体はキナーゼ活性を必要としない形でシグナルを伝達しており、この知見は、医薬品開発や患者の治療戦略の指針となる可能性がある。

要約

ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害薬のイブルチニブは、BTKのCys481に不可逆的に結合し、そのキナーゼ活性を阻害することにより、B細胞受容体(BCR)シグナルの伝達を遮断する。イブルチニブはB細胞悪性腫瘍の患者において有効性が持続するが、それでも多くの患者がイブルチニブ耐性疾患を発症する。耐性は、BTKのイブルチニブ結合部位の変異によって生じる可能性がある。今回われわれは、C481FおよびC481Yの2種類のBTK変異によってイブルチニブ耐性が生じる機構を明らかにした。いずれの変異体も、in vitroキナーゼアッセイにおいて検出可能なキナーゼ活性が欠けていた。構造モデリングにより、481位のかさ高いPheおよびTyr側鎖が、BTKのATP結合ポケットへの接近を立体的に妨げ、キナーゼ活性の喪失の一因となることが示唆された。それでもなお、BCRシグナルは、BTK C481FおよびC481Y変異体を介して、下流エフェクターであるホスホリパーゼPLCγ2と転写因子NF-κBに伝達された。このようなBCRシグナル伝達の維持の一部は、造血細胞キナーゼ(HCK)の物理的動員とキナーゼ非依存性活性化によって達成された。BCRが活性化すると、BTK C481FまたはC481YはSrcファミリーキナーゼによってTyr551がリン酸化され、続いてHCKのSH2ドメインに結合した。モデリングにより、この結合が、HCKにおける分子内自己抑制性相互作用を阻害することが示唆された。活性化HCKはその後PLCγ2をリン酸化し、それによってBCRシグナルを伝達し、クローン性細胞増殖を促進した。このキナーゼ非依存性機構は、C481FまたはC481Y BTK変異体を有するCLLの治療方法に有用な情報をもたらす可能性がある。

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