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立ち上がって汗を流してがんを治療しよう

Get up and sweat to treat cancer

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
14 Jun 2022 Vol 15, Issue 738
DOI: 10.1126/scisignal.add4188

LESLIE K. FERRARELLI

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: Lferrare@aaas.org

E. Kurz, C. Alcantara Hirsch, T. Dalton, S. A. Shadaloey, A. Khodadadi-Jamayran, G. Miller, S. Pareek, H. Rajaei, C. Mohindroo, S. Baydogan, A. Ngo-Huang, N. Parker, M. H. G. Katz, M. Petzel, E. Vucic, F. McAllister, K. Schadler, R. Winograd, D. Bar-Sagi,, Exercise-induced engagement of the IL-15/IL-15Rα axis promotes anti-tumor immunity in pancreatic cancer. Cancer Cell 40, 1-18

運動は、特定のT細胞を動員することによって、化学療法および免疫療法と協力してがんと闘う。

運動は、様々ながんのリスク低下と、治療を受けているがん患者のQOLの改善に関連する。Kurzらは、治療選択肢の少ないがんである膵管腺がん(PDAC)のマウスにおいても、有酸素運動が抗腫瘍免疫を刺激する可能性があることを見出した。Kras変異PDACのマウスモデルにおいて、低強度トレッドミル走の処方(ヒトで通常推奨される運動量である30分週5回の有酸素運動に従う)により、腫瘍の自然発生が遅延し、確立した腫瘍の増殖が緩徐になり、腫瘍細胞のアポトーシスが誘導された。これらの効果は、体重の変化または環境とは無関係であったが、浸潤免疫細胞の環境の変化と関連していた。すなわち、対照と比較して、運動を行ったマウスから摘出した腫瘍では、T細胞抑制細胞が少なく、活性が低かった一方、細胞傷害性(CD8+)T細胞が多く、活性が高かった。運動の効果は、CD8+ T細胞を欠損したマウスでは消失したが、患者において再現され、外科的切除後の生存率上昇と相関した。腫瘍と、これまでに運動と関連付けられている腫瘍浸潤CD8+ T細胞、免疫細胞動員経路、および免疫細胞マイオカインに関するさらなる解析によって、運動は、腫瘍内のIL-15Rα+ CD8+ T細胞数の増加を刺激し、(運動を行ったマウスの)腫瘍内ではIL-15量の増加が検出されることが明らかになった。しかし、それらのT細胞では、表面のチェックポイントタンパク質PD-1の存在量も増加していた。運動処方にPD-1阻害抗体を追加すると、相乗的に腫瘍浸潤IL-15Rα+ CD8+ T細胞の数が増加し、腫瘍増殖が緩徐になった。臨床試験と一致して、PD-1抗体単独ではPDAC腫瘍に対して無効であった。IL-15「スーパーアゴニスト」(IL-15とIL-15Rαから成るヘテロ二量体)をマウスに投与すると、運動の抗腫瘍効果と免疫療法増強効果が再現された。腫瘍増殖抑制と動物の生存は、IL-15スーパーアゴニスト、PD-1抗体および化学療法の3剤併用療法によって、もっとも効果的に向上した。総合すると、これらの結果は、特に標準的化学療法と併用した場合にPDAC患者における免疫チェックポイント療法の一定の効果を引き出すためには、運動することまたは運動による免疫系の調節を模倣することが鍵となる可能性があることを示している。

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